理想と真実 本
□第十六話
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《……あれで、よかったのか…?》
冷凍コンテナから遠く離れ、6番道路の森の中を奥へ奥へと歩いている最中、スイラが唐突にそう話しかけた。
だが、その質問にレインは目線(といっても目を見られて以来深くかぶっていてわからない)を一度こちらに向けただけだった。
《おい、答えろよ》
『……』
無言を貫き通すレイン。それにスイラがキレた。
《…ッおい!!》
『ッ!?』
レインの目の前に回り込むと、勢いよくレインの肩を押し、地面に押し倒す。
『…なにすんだよ』
《……》
こんどはスイラが黙った。押し倒されたレインは抵抗もせず、ずれたフードの中からスイラを見つめる。
《……と、思う》
『は?』
小さな声で聞き取れない。
《……オレらは、お前の目……綺麗だと思うって言ったんだっての》
レインの上からどいてスイラは、聞き取れるギリギリの声でそう呟いた。
『…何をいきなり』
《いいか。オレの体は6割方水色だ。んでもって目は赤》
『いきなり何を言い出すんだよ。んで、何が言いたい』
《お前と同じだってんだよ、レイン》
その言葉に拍子抜けた。
『…そりゃ当たり前だろ。オレにされたんは』
《話さなくていい。知っているからな》
その場に胡坐をかいて座ったレインの目の前に、同じように伏せるスイラ。
《たとえお前が全人類の敵になろうと……オレはお前についていく》
『……』
《そう思っているのはオレだけじゃない。お前の持つすべてのポケモンが、お前の味方だ》
『……はぁ』
さっきまでいろいろ考えてたのがなんかバカらしく思えてきたっての…。
《レイン》
『お前は…いや、お前らはさ』
目が熱い。
『ホントにさ…』
本当だったらここで泣くのが普通なのだろうが、オレは涙なんってものが出ない。そうさせられたから。
その出てこない涙の代わりに、掠れた笑い声が出てきた。全然雰囲気に合わねぇ。
『ククッ、救いようのねぇばかになったな』
《お前に言われたかねぇな》
『フハッ………そうかもな』
空を仰ぐ。いつもと変わらない晴天だ。その時だった。
『《ッ!》』
二人(一人と一匹ともいう)がいきなり立ち上がり、あたりをせわしなく見回す。
『……感じたか?』
《………ああ。“奴ら”のだ》
『まだいると思うか?』
《いや……かなりのスピードで移動していた。もうここにはいないはずだ》
『あの気配は……エンテイとライコウそのものの気配だ』
カバンの中からグレンとライデンのボールを取り出す。そのまま放った。
『…グレン、ライデン』
《我も感じた。ヤツの気配だ。しかもあろうことか我の姿形を真似しているようではないか》
『その通りだ』
《…気味が悪いわね》
気分が悪そうに始終唸りながらそう吐き捨てたグレンとライデン。すぐにボールに戻すと、来た道を戻り始めた。
《何をそんなに慌ててんだ》
『早急にジムを回る理由ができた』
最後には走り出す始末だ。
『奴らは……イッシュにいる』