理想と真実 本
□第十六話
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≪…バレ、た?≫
≪ああ、バレただろうな≫
レイン達が森から出ようとしている中、先ほどの二つの気配…レンとナギサは猛スピードで移動していた。
もちろん、彼女らが感じたようにエンテイとライコウの姿形を真似て。
≪…総帥、に、怒られ、る≫
ライコウになっているナギサが、前方を駆けるレンに言う。
≪それはないと思うぜ??むしろ褒めてくれるだろ≫
一方エンテイになっているレンは少し後ろを振り返ると、ナギサが隣で走れるぐらいにスピードを緩めた。
≪何、で?≫
≪俺らの目的がわざわざ俺らの前に姿を現してくれんだぜ?≫
本当は追っかけてきて欲しかったんだけどな。そう呟いたレンにナギサはゆっくりと頷いた。
≪私、レインに、会いたい≫
≪あー、お前の場合はそうか≫
≪レンは、違うの?≫
≪あー、まぁそんな感じか≫
森を駆け抜け、人目につかぬよう一瞬で移動する姿はまるで疾風だ。
≪そういやさ、お前ちゃんと話せるようになってきたな≫
≪きっと、力、が、定着し、てきたんだ、と思う≫
≪お前ら100番台は定着がおせぇよな≫
≪私達、100番台、は、レン達10番台と、は、別の薬で、力を、入れて、るから≫
≪その薬、俺らのと何が違うんだ?≫
一度黙った後、ナギサはゆっくりと言葉を選ぶようにして話した。
≪…私達には、ターゲットを、決めて、そのターゲットの血を、見ると、何も考えずに、襲うように、設定されてる。
でも、設定の仕様に、よっては、捕獲、抹殺、もできる。今設定されてるのは、捕獲≫
≪……≫
≪そして私の、ターゲットは、レイン≫
≪それでか≫
総帥に言い渡された命の意味が今ようやく分かった。レインを見つけたら何でもいいから傷つけろと言われたのはこの為だったのか。
初めは無傷で連れて来いと言っていたのに、途中ナギサが加わってから先ほどのようなことを言われるようになった。
≪(ホント、総帥たちは何としてでもオリジナルを手に入れたいらしいな)≫
≪レン?≫
≪なんだ?≫
≪……プラズマ団≫
≪チッ≫
なるべく人目につかないようにはしていたが、それは絶対に見つからないというわけではない。
この力を真昼間から使うのは、かなりのリスクを伴うのだ。
「よーしよし、いいこだな!」
「おとなしくこの檻に入りなー?」
「そうすりゃ痛い目せずに済むからな」
猫なで声で檻へと二人を誘導しようとするプラズマ団たち。いつの間にか周りは全て包囲されていた。
≪レン≫
≪ああ……いいぞ≫
レンの許可とともに、ライコウ(ナギサ)の尾に電気の塊が出来上がる。
≪電磁砲≫
「あがぁッ」
放った瞬間それはプラズマ団の目の前で拡大し、一気に5〜6人ものプラズマ団が巻き添えにされた。
いまいち状況が理解できていなかった様子のプラズマ団だったが、漸く頭が働き始めるころには二発目が繰り出された後だった。
「う、うわぁッ!」
「に、逃げろ!!」
「本部に連絡だ!!」
≪そうはさせるか…。フレアドライブ≫
「あぁああああああッ!」
「うわぁあああああ!!!!」
とうとうそこにいた数十人ものプラズマ団は全滅した。
≪…やり過ぎたか≫
≪…治療、する?≫
≪いや、いいだろ≫
そこらへんは本部がどうにかするさ。と何とも他人任せなことを呟く。
≪さて、帰るぞ≫
≪うん≫
そうして二人はその場からしんそくを使い去った。
プラズマ団はその後近辺を散歩していた老夫婦が見つけ、ジュンサーに引き渡されたらしい。