理想と真実 本
□第十八話
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「…ひとまずここでいいか……」
グリーンが選んだのは6番道路の森の奥深く。あんなことがあった以上、ポケセンに運ぶなどできるはずもない。
そしてヤーコンは自らここに来ることを拒んだ。ジムリーダーには何らかの情報は回っているのかもしれない。
「……グリーンさん、で、いいんですよね?」
「ああ、そうだ。お前らは?」
「ボクはチェレンです」
「わ、ワタシは…ベル、です」
「そーか」
「あの…そちらの方は…?」
「ああ……レッドだ」
森についてからというもの、レッドはいまだにレインを離さず、それどころか抱きしめていた。
「……で、あれはいったいどういうことなんですか?」
「あー、あれか…。オレが話してもいいモンなのか?」
本人に話させたほうのがいいのだろうが…
「(アイツが素直に話すとも思えねぇな…)」
元から意地っ張りで負けず嫌い。んでもって他人に迷惑はかけようとしないどころか、関わろうとしない。
良く言えば気がきく子。悪く言えば無愛想な子。きっと目が覚めたら知らないうちに消えているのがオチだろう。
「…まあ、いいか。アイツはな……」
『……ん…?』
目は覚めた。だがここは……現実じゃない。
『クソ…。いまいましいけんきゅうじょか』
じゃあオレは捕まったのか?いや、でも意識が消える瞬間なぜかレッドの声聞こえたし…。
『(ああ、これはゆめか)』
手元を見れば一回り小さくなった掌。そばにあった水たまりに顔を移せば、髪色はまだ“茶色”だし、瞳も“黒”だ。
そういえばこのころはこんな口調じゃなかったし、一人称も私だったな。
『もとにもどってる…』
それにしてもリアルだ。物に触れた触感も、鼻にくる薬品の臭いも。……時たま聞こえてくる子供の悲鳴も。
『(なんなんだ、ここは…ゆめにしちゃできすぎてるし)』
とりあえず考えることを止めた。考えたってどうにもならないことは明白だ。
「ぜろねぇ…」
『ッ』
【零】研究所にいたころbノなぞらえて呼ばれていた名だ。
『……ハツ』
「どぉしたの?かおいろわるいよ?」
目の前に立つ白髪の少年。言うまでもなくこの研究所に売られた子供だ。
『いや…なんでもないよ』
というか幼児化していて舌が回らない。
『…そのキズ』
「あーうん。ボクにはね、【フレイムコア】とのあいしょうがいいんだって!」
うれしそうに話すハツ。その右腕には乱雑に包帯が巻かれ、血が滲んで赤く染まっている。
『ハツ…』
「なーに?」
『おまえは…コアとはんのうすることがうれしい?』
「うん!だって…」
そこで顔を俯け、左手を固く握る。声は小さく震えていた。
「はんのうしなかったら、ころされちゃうもん…」
ああ、確かにと思った。というか過去のしゃべり方マジでやりずらい。なんでしゃべるとこういうしゃべり方になるのか不思議。
『(あー、オレはコイツらの母体であるコアだから殺されることはまずねぇが、コイツらは拒否反応が出た時点で…)』
処分される。つまり殺されるのだ。使うだけ使っていらなくなったら捨てるという何とも馬鹿げたことをするのだココの研究員は。
『さっさとねな。またあしたもあるんでしょ?』
「…うん!」
おやすみーといいながら去っていくハツ。ちなみにハツという名はわたしが付けた。8だからハツ。
『(オレの記憶が正しけりゃ、今日はあの実験の日で…)』
「0!時間だ!!」
『(やっぱり…)』
部屋の入り口から差し込むわずかな光。一寸先も闇だったこの部屋に差し込む光は僅かでも目を痛めるのには十分だった。
「何をしている!早くしろ!!」
『わたしをきずつけてそんするのは、おまえたちだけど?』
「…ッ!はやくしろ」
『…』
腕を強引につかまれ、部屋から連れ出された。