理想と真実 本
□第十八話
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オレの記憶違いじゃなければ、これからオレは……
「さあ、着いたぞ」
投げ出されたのは手術台の上。抵抗する間も無く手術台に固定され、口に猿轡をかまされる。
「さぁ、これからお前は生まれ変わるんだぞ!!」
「お前の両親に感謝することだ!お前は人間を超えた人間になるのだからな!!」
人間超えたらもはや人間じゃねぇだろ、という突っ込みはしたくてもできない。言えても言わないが。
とりあえず周りの人間の顔を観察。うん、あの時と変わらない顔ぶれだ。
「始めるぞ!!集中しろ」
「ああ」
途端に証明がつけられる。あまりの眩しさに目を細めると、体中に激痛が走った。
『あァああアァあッ!』
「痛みは少しの間だけだ、耐えろ」
『いッ、ヴァああァアッ!』
体中に差し込まれる細い管。そこから体に入ってくるよくわからない気持ち悪いモノ。
「さて、ここからが本番だ。アレを入れるぞ」
『グぅッ!?―――――ッ!!?』
そこで声にならない悲鳴が出た。もう痛いなんてものじゃない。体中を引き裂かれるような、もう、死んだほうがましだと思えた。
「耐えるんだぞ。これに耐えればお前は…」
『――――ッ!!!!!(まっさか、コレを2度も体験させられるとはな)』
突然、体中の痛みが引いた。それと取って代わるように訪れたのは虚無。何もかもすべてが消えた。
『……』
「オオ!!これは…」
「成功だ!!成功だぞ!!」
そんなことを横で叫んでいる研究員にさえ何も抱かない。感じない。ダレだ、コイツラは…。
『………』
外された拘束具。上半身を起こして見せれば、歓喜の声はより一層大きくなった。
「これが……これが、われわれの研究の集大成だ!!」
「ロケット団にも、アクア団にも、マグマ団にも、最近できたらしいプラズマ団にも引けを取らんぞ!!」
「コイツさえいれば伝説幻のポケモンなど屁でもないわ!!」
それを冷めた目で見つめる。ポケモン……?ああ、あの生物のことか。ロケット団……?アクア・マグマ……ああ、あの屑連中か。
プラズマ団は聞かないな。新しい奴か。そうだ、あの研究員はわたしを殴った奴だ。アイツはわたしを斬った奴だ。あの二人組はわたしをバカにした奴だ。
『ああ…(そしてこれは、夢だったんだ。本物じゃない、幻想なんだ…思い出したぞ、すべてを)』
「しゃべったぞ!!」
「成功だ!!大成功だ!!この分だと来年にはお披露目といけそうだ!!」
鎖を手繰り寄せるかのように思い出していく記憶。この研究所に連れてこられたのは…
『(森で生活していたわたしがポケモンと話せると知った奴が、金で売ったんだっけ)』
わたしの能力を引き出し、コアという物体にできるところ発見した奴らは…
『(世界中の子供を連れてきて適合者を探し始めた)』
そしてわたしは……
『こんなの、“わたし”じゃない』
「……どうした?」
『こんなの、自分じゃない』
「如何した!?この期に及んで拒否反応か!?」
「クソ、まだコイツでやるんじゃなかった…。ほかの実験体で研究を重ねろとあれほど言っただろう!!」
「やってしまえば後の祭りだ!それにお前も喜んでたじゃないか!!成功だと!!!」
「な、なんだと!?」
「まあまあ、とりあえず経過を見守ろう。もし拒否反応がひどいようならその時に対処の方法を考えればよい」
「、そうだな」
「ああ」
わたしの横で勝手にしゃべって、勝手にもめて、勝手に完結して……
『勝手に』
「…?どうした?」
『勝手に…』
「拒否反応がひどくなってきたのか!?」
一気にあわただしくなる周り。手当たり次第に資料を探し出し、対処方法を見つけ出そうとする。
『勝手にわたしの、わたしの人生を、わたしに関係のねぇ奴らを…』
ああ、徐々にオレが戻ってくる。
「如何し、ッ!」
『傷つけるなァあああああ!』
その咆哮だけであたりの器具は破壊され、近くにいた研究員は吹っ飛ばされた。