理想と真実 本

□第十八話
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「お、落ち着け!!」


「今鎮静剤を持ってきてやるからな?な?」


「ほら、親である私達には向かうんじゃないってあれほど言っただろう?」



あたりは吹っ飛んだ研究員の有様を確信した後、大慌てでわたしを宥めにかかった。



『…そうだよ』


「?どうしたのだ」


「きっとあれだ、力を受け取ったばかりで制御ができなかったのだろう」


「ああ、そういうことか」



勝手に物事をいいほうに集結した研究員二人。その二人の元に駆け寄り………殴り飛ばした。



「0!!ふざけるのもいい加ボギャッ!?」


「cEゴフゥ!!」


『ふざけるのもいい加減に…?それはお前らのほうだろう?』


「0!!」


『その名で呼ぶんじゃねェええええッ!』



とりあえずその場にいた研究員はすべて消した。その後も研究員を見かけただけ消した。実験体はすべて逃がした……と思う。



「ぜ、ぜろ…ねぇ?」


『ハツ?』


「うぁ…あ、ば、ばけものだぁあああ!」



血まみれの姿でハツの前に出てしまったからだろうか、それとも姿形が変わり始めてしまったからだろうか。



『化け物、か』



たまたまそばにあった鏡を見れば、変色した髪と瞳。変な刻印が刻まれた左腕。
とりあえず取れるかなと何度も引っ掻くが、傷跡が残るだけで取れやしない。



『こんなの…わたしじゃない。そうだ、オレだ。オレはこんな口調じゃねぇな』



その姿を見た瞬間決意した。わたしはオレになると。わたしを捨てると。オレになりきると。



左腕の刻印は見えないように包帯で巻いた。その後スイラことスイクンと会い、他のポケモンたちと出会った。
人間とは違いオレに対して偏見の眼差しを向けない。ポケモンはオレにとって唯一無二の仲間でありかけがえのない家族だ。

その後、気まぐれでリーグに挑戦したら人間に囲まれた。人間は嫌いだった。逃走するたびに捕まえられ、閉じ込められる。
あのころに戻ったようで嫌だった。だから………レッドが来た後、作戦を共に練り、逃げた。



『(オレの自由は、普通の生活は……ないのか?)』



オレが願うものは全て手に入らない。なんでだ、なんでなんだ。ひどいものだ。



『もう、いいや…』




『期待するだけ無駄だ』




『分かりきったことじゃねぇか』




『何を期待していたんだ、オレは、わたしは』




『ははは、笑えてくる…』




『もういい』




『諦めよう』




『期待しても』




『期待したものは、来ないじゃねぇか』




『オレから、離れていくじゃねぇか』




『オレにはポケモンだけいればいい』




『人間の仲間なんて、持つだけ無駄だ』




『気付かなかったオレが』




『馬鹿だったんだな』










『……う』


「!!」


「お、起きたか?」



ちょうど過去を話し終えたところで起き上ったレイン。チェレンとベルだっけ?は、あまりに壮絶な過去に放心状態だ。



「レイン……あの、」


「ごめん!!レイン!!!」



先に謝ったのはベルだった。それに続くようにチェレンも謝る。



『ああ、気にしちゃいねぇよ』


「レイン!」


「…」


『だからよ、もう金輪際オレに近づかないでくれ』


「…え?」


「は…?」


「レイン?お前…」


「……」



レッドの腕を引きはがし、赤く染まっている瞳をオレ達に向けたレイン。その瞳は……濁っていた。何も映しちゃいない。



『じゃあな』


「…待て」


『……なんだよ』


「どういうことだ」



うお、珍しい。あのレッドがよくしゃべってやがる。



『どういうことって?』


「近づくなとはどういうことだ」


『そのまんまだ。オレに近づくな。関わるな』



腕を振り払い、その場から消えて行ったレイン。



「私たち…大変なことしちゃったんじゃないのかな…?」


「…ああ」


「怯えたから、私が…!」


「違う」


「レッドさん?」


「アイツはああいう過去を持ってる。だから人にはかかわらないようにしてる。きっと…」



その先は聞こえなかったが、なんとなく言ってることが分かった。



「闇を取り除くんだ、オレ等で」


「ああ」


「うん!」


「はい」



決意新たにオレ達は森から出た。きっと今頃アイツはここのジムリーダーを瞬殺したのだろう。
アイツの闇は底知れない。だからこそ、そこから救ってやらなきゃいけないんだ。他の誰でもない、オレ達が。




  
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