理想と真実 本
□第二十一話
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先ほど嫌な別れ方をしてきたばかりだが、一応念のためにワタルに連絡を入れる。ワンコール鳴り終わる前につながった。
「レイン!!今どk『うるせぇ、叫ぶな』…君は…!」
『組織の手下が接触してきた。オレが今どこにいるのかもほとんど把握されているらしいな』
「なっ!?」
『しばらくの間お前らとは連絡を取らない』
「何故!?」
『聞かなきゃわかんねぇのか?とりあえず言いたかったことはこれだけだ』
「ちょ、まだ聞きたいことが『切るぞ』お」
全てを聞き終わらないうちに通話終了ボタンを押し、電源を落とす。
《随分と一方的な連絡だな》
『うるせぇ……今どこで会話を聞かれてるかわかんねぇンだ。易々と連絡できるわけねぇだろ』
《やり方はもっとあったはずだろ》
『オレにはこの方法しか思いつかなかった』
あからさまにため息を吐いて見せるスイラを横目にとらえながら、周りの気配を探ってみる。
『……南東、北西』
《南南東にもいるぞ》
『分かってる』
全てが3〜4人のグループとなっているらしい。北と南に分かれているところを見ると、挟み撃ちでもするつもりか。
『団体行動取ってる当たり、まだ定着しきっていない下っ端だな』
《どうするつもりだ?》
『どうするだと?愚問だな。………潰しに行くぞ』
《だろうな》
ふっと鼻で笑うスイラに同じく鼻で笑い返して見せ、その背に跨る。
『北から回れ。比較的距離が近い』
《ンなコト分かってるっての》
かなりのスピードで走り始めたスイラから振り落とされぬよう掴む。この際フードなどかまっているヒマはない。
《……見えたぞ》
『破壊光線だ。もう慈悲などというものだすなよ。どうせ生け捕りなど無駄だからな』
《……分かってる》
口元にためだしたエネルギーの塊。今度は確かに破壊光線だった。
『…撃て』
ドウッ
普通の破壊光線とは違う、スイラが独自に編み出した球体上の破壊光線は、寸分の狂いもなく人型の元へ飛んでゆく。
先ほどと同じく黒い布を巻きつけていた三人の人型は……跡形もなく消えた。
『相変わらず凄まじい威力とコントロールだな』
破壊光線によって編み出された衝撃波はあたりの木々をなぎ倒していた。
《……これもアイツらのおかげだがな》
皮肉そうにつぶやいたスイラは、先ほどまで人型が歩いていた場所で止まった。
《まさか、こんなことをまたする羽目になるとわな…》
『……わりぃ』
《…ハッ、お前が謝ることじゃねぇだろ》
ふと、空から黒い布の切れ端が落ちてきた。それはレインの顔の前を横切ると同時に粉々になって認識できなくなった。
《…なぁ、アイツらを救う方法はないのか》
アイツらとは、もちろん先ほどの人型……人体実験のモルモットにされた、可愛そうな子供達のことだ。
『……無いわけじゃない』
《なら…!》
『だが、それには……』
腰についているカバンを見る。それだけで通じたようで、スイラは黙った。
『痛みを感じる前に消してやる。それが今出来るアイツらを救う方法だ』
《…あぁ…》
『……行くぞ。次は南南東だ』
次の瞬間には二人の姿は消えていた。