理想と真実 本
□第二十三話
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『そっちがその気なら、オレも対抗するしかねぇな』
今度は逆にレインがレンに近づいて行く。
「…オレとしてもその方がいいですよ。本当は無傷で連れて行くために争いたくはなかったですけど」
抵抗した場合は、例外だよな?そう呟く。
『…出来ればお前らとは争いたくはなかったよ』
一時でも弟分だったやつだ。そんな奴と争うのは流石に気が引ける。
「そんな甘いこと言ってると、死にますよ?」
『ふ、それはお前の方だ。完全に対立した今、お前に対してて加減する理由はなくなった。
昔よりは出来ているつもりだが、オレは力を加減するのが苦手でよ。悪く思うなよ?』
赤い瞳がぶつかり合う。そこに遠慮の色は見受けられない。お互い殺す気の目だ。
「…っ」
「どうした、ナギサ」
「…総帥が…」
「ちっ、こんな時に…何でんだって?」
「緊急の、帰還命令…」
「はっ!?ンなの従えるかってんだ」
「だ、め…総帥を怒らせると…!!」
「電流なんかにかまってられるかっ!あんなの…っ、!?」
突如、レンの言葉が途切れる。目はこれでもかというほどに見開かれ瞳孔は小さくなっていく。
口は苦しそうに開閉し、何とも言えないうめき声が漏れ出てくる。
「あっ…ぐ……」
「総帥…っ」
―「言う事を聞かないからこうなるのだぞ、No.8」
「く、そ……ジジ、イ、めが…っ!」
―「ほぅ、まだそんなことを言える余裕があるのか。……お仕置きだ」
「あ゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛っ!」
「レンっ!」
―「…“妹”に免じてここまでにしてやる。No.8」
「はっ、はぁっ、はぅぁっ…!」
苦しそうに地面に崩れ落ちるレン。そばに駆け寄るナギサ。
一方レインはその場に足を縫い付けられたかのように動けないでいた。それはスイラも同様に、だ。
『(なんで…コイツが…ここに…っ!?)』
あまりの衝撃に気絶してしまったレンを見下ろすように立っているのは…総帥。
よく見てみれば足元がぼやけている。ホログラムだ。
―「…おや、No.0じゃないか。久しぶりだな。元気にやっていたか?」
『…』
―「スイクンも元気そうで何よりだ」
『…そっちも元気そうだな。いい加減くたばれよクソジジイ』
殺気を込めた目線を送るも、所詮相手はホログラム。
―「ふはは、まだまだくたばれんよ。……お前さんをこの手に取り戻すまでは、な」
『っ!?』
ブゥン…と機会音を鳴らして総帥のホログラムが目の前に現れる。
―「少し前に暴走したようだが…昔よりは使いこなせているようだな」
『…失せろ』
―「これならまた前のように回りくどいことをせずに済みそうだ。本当にお前は手がかからないいい子だ」
『失せろ』
―「今日のところはNo.8の独断行動だったからな。また日を改めてお前さんを迎えに来よう」
『失せろっつってんのが聞こえねぇのかっ!!』
《抑えろ、レインっ!!》
―「おやおや、また暴走するのかい?駄目じゃないか…お前から感情は取り払ったはずだろう」
戻りかけているのかもしれんな。そう一人で納得したように頷くと、総帥はレインに残酷な言葉を吐き捨てた。
ー「お前さんの両親も会えるのを楽しみにしている。……また会おう」