理想と真実 本

□第二十四話
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《さぁついたぞ》

『助かった』



砂地に降り立った瞬間、スイラも同時に出てくる。



『ミカルゲがいるのはここの最奥らしいな』

《普通に行くのか?》

『いや、今は時間が惜しい。力を使う』



フードを脱ぎ、紅い目があらわになる。一瞬目が鈍く輝いた。



《…レントラーか。確かにコイツなら暗闇でも透視できるな》

『邪魔な瓦礫はアイアンテールで砕いていくぞ。……遅れるなよ』

《誰に言ってんだ。オレが遅れるわけねぇだろ》

『ルアン、お前は組織の奴が来ないか見張っていろ』

《あぁ、任せておけ》



大きく頷き入口の前に座り込んだルギアを見て、二匹は洞窟の奥へと入っていった。



《…思ったよりも暗いな》

『フラッシュを使うか』



レントラーの体が光り輝き、辺りが明るくなる。



《こういう時はお前に能力があってよかったと思うな》

『おかげさまで逃亡生活だけれどもな』



邪魔な岩はアイアンテールで砕きつつ、二匹は奥へと向かっていった。










『……ここだな』

《みたいだな》



入口の脇にはゴローニャが二匹待機していた。



《来るのはスイクンを連れたトレーナーだと聞いていたが?》

『ああ、すまない。オレがそのトレーナーだ』



レントラーから人へと戻ると、警戒していた二体のゴローニャは入口からどいた。



《奥にミカルゲ様がいる》

《ミュウ様もいる》

『ヨノワールから聞いている。他にはいないな?』

《いない。この入口は我々が警護する。安心して話してくるといい》



洞窟の中に入ると、中央にミカルゲとミュウがいた。



《あ!ようやくきた!!レイン〜!!》

『おぶっ』



レインに気付いたミュウはテレポートでレインの傍に来ると、そのままタックルした。



『…おい、ミライ…』

《ん〜?なぁに?》

『いいからどけ。今日は遊びに来たんじゃねぇンだ』



首根っこを掴んではがすと、ミュウは口に両手を当てて一度笑った後、真剣な顔つきへと変わった。



《ヨノワールから話は聞いている。ミュウツーについて聞きに来たのだろう》

『ああ、頼む』

《さて、どこから話そうか…》





ミュウツーがミュウをもとに造られたのは知っているな?ミュウツーはミュウよりもさらに強力になるように造られた。その際に最も注意されていたのは人の心を感じ取るという機能を低下させることだ。それによりどんなに無残なことでも執行できるようになった。
しかし、そんなミュウツーにも一時心を宿した時期があった。ある少年によってな。覚えているか?


…ああ、覚えている。どこで起こったのかは忘れたがある特定のトレーナーに対し招待状が送られ、彼らのポケモンがコピーされた事件だろう。確かそれにはサカキも加担していたな。


当たりだ。その時、確かにミュウツーは心を持っていた。しかし、問題が起きたのはその後だ。誰の目にも留まらない、最果ての地ともつかない場所でひっそりと暮らしていた彼らに、組織が手を出した。
組織はミュウツーを捕まえると、手始めに心を消した。そして、お前の血をより強力にするために多くの実験ポケモンをコピーさせた。そうして増えたポケモンを使い、実験が行われた。


それだけじゃあないよー。人に埋め込むコアの力をより強大なものにするために、コア自体にポケモンの細胞を埋め込んだんだ。その細胞を作り出したのも、かれなんだ。世界中のポケモンがかれによってコピーされた。それこそ、伝説・幻のポケモンまでもがね。


そして今、お前が落とした一滴の血の培養が効かなくなっている。組織がお前を最近になって執拗に追いかけている理由はそこにある。





『…やっぱりそんなコトだろうと思った』

《あれ?思ったよりおどろかないね》

『大体は目星がついてたし、ミュウツーが関わって来た時から最悪は想定していた』



頭に乗って来たミュウがクスクスと笑う。隣にいるスイクンは黙ったままだ。



《組織の場所は大まかには分かっている》

『…どこだ』

《もちろん場所はイッシュだ。拠点もお前がここにいることが分かってからここに移りつつある。八割方がこちらに移っただろうな》

『そうか』

《八割方!?ほとんどじゃねぇか!》

《驚くことか?まだ八割方だと考えたほうがいい》

『ミュウツー自体はこっちに来てんのか?』

《いや、まだだろうな。機材はそう簡単に運べるものじゃない。来るとしたら最後だ》

『ならいい。こっちに来ている勢力をすべて潰した後、本部を叩けばいい』

《あれー?もう帰っちゃうの?》



急に立ち上がったからか転がり落ちて来たミュウ。もちろん地面に転がるなんてことはない。



『ああ。やることが出来たからな』

《…どうするつもりだ。力関係的にはどう考えても負けているだろう》

『ビビってんのか?スイラ』



ククク、と喉の奥で笑う。



『負けるだなんて、誰が決めた?』

《…ボクね、レインのそーいうところすきだよ》

『そうか』

《でも具体的にはどーするの?負けてるのは本当だよ?》

『誰もオレ達だけで戦うなんて言ってねぇだろ。使える奴らは誰でも使うつもりだ』

《すべて使う、ね》

《ヨノワールに伝えておこうか、オーキドの元に戻りもともとお前が育てていたポケモン達に言っておくようにと》

『頼む』

《ボクも言っておくねー!》

『誰にだ』

《……すべてのジムリーダー、四天王、チャンピオンに》



ボクたちの大切な、大切なひとを、守るようにって。



『……フ、頼んでいいんだな?』

《もっちろん!まかせといてよー!組織とやりあいそうな場所はどこ?そこにつれてくからさ。って、わかんないか》

『いや。分かるさ。餌はまいた。もし食いついていたとしたら、奴らが来るのは』





ポケモンリーグだ




    
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