理想と真実 本

□第一話
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『…?』



いつの間にか眠っていたらしく、目を開ければ冷たい風が全身を包んだ。



『…見なれない地方。ここがイッシュか』



ルアンから身を乗り出して下をのぞけばそこにはジョウトやカントーとは違う土地が広がっていた。
シュンカはいつの間にかボールに戻っていた。その時ルアンがいきなり吠えた。



『?どうしたルアン……お前が原因か』



ルアンの頭の上に何かが付いていた。
白っぽいもふもふしている何か(たぶんポケモン)のせいでルアンは視界を覆われ前が見えなくなっているようだ。



『おいお前。こっちに来い。そこにいると危ねぇ』



そう語りかければ白い何かは素直にこっちに来た。
…なんか鷲みたいなやつだな。



『なんつーポケモンかは知らないが、まあ下に降りるまでここにいろ』



そうして白い(以下略)は胡坐をかいたオレの膝の間に置いた。



『これで大丈夫だろうルアン、あそこに降りよう。出来るだけ森の中に降りろよ』



ルアンはその言葉に頷くと、出来るだけ雲の中に隠れながら森の中に降りて行った。










無事に降り立てば、周りにいた野性のポケモンは皆逃げて行った。



『戻って休んでろ』



ルアンをボールに戻し、白い(以下略)を見つめる。
先ほど地面に置いたのだがなぜか離れずひっついてくる。



『お前、オレと行くか?』


<ギャギャギャッ!!>



いきなり肩の上に乗ってきた。どうやら一緒に行きたいようだ。今はボールを持っていないため、肩にのせておく。
と、突然腰のボールからいきなりポケモンが出てきた。



『スイラか。ボールの中はさぞかし窮屈だったろうな?』


<ギロッ>



まるでそうだと言わんばかりに睨まれた。…仕方がないだろうよ。
飛んでる時はお前が座れる場所なんか無いんだよ。



『…そう怒んなよ。ほら、行くぞスイラ』



スイラに跨りながら宥める。
白いのは今度は腕の中だ。走っているときに飛ばされそうだからな。



『行け』



スイラは走りだした。












『森はここで終わりか。ここはどこの町だ?ウォン』



眼を閉じ、力を使いながらウォン(白いのに先ほど付けたのだが)に聞く。



《ここは、カノコタウンですね》


『カノコ…ああ、アララギ博士がいるところか。ちょうどいい。渡す物があるんだ。スイラ、ここからは歩いていく。
お前はどうする?ボールに戻るか?』


《いや、オレも行く。何かあったら大変だ》


『へぇ?心配してくれんのか?』


《何もお前のためだとは言ってねーだろ?》


『…黙ってろ』


《私も行きます。貴方に何かあってからでは遅いですので》


『じゃあ行くぞ』



森から出て、町の中に入る。
家は数件ほどしかなく、何処が研究所だかはすぐに見当が付いた。
それに今の時間帯にもかかわらず、人が誰も外に出ていないのも助かった。
ウォンはいいとしても、スイラが見つかったらどうなるか分かったものではない。



『アララギ博士、入るぞ』



特にノックもすることなく、まるで知り合いのようにずしずしとは言っていく。
(いや、実際知り合いなのだが)



「あらら、レインちゃんじゃないの!ようやくこっちで旅をしてくれるのね!!」



姿を見られた途端、まるで"しんそく"のように目の前に現れるアララギ博士。



『向こうのリーグの輩が煩かったから逃げてきた。今度はこっちで旅をする』


「そう!!こっちは面白いわよ!!向こうにはいない新種のポケモンが多く生息しているし、まだ発見されていない子もいるのよ!!」


『そうか、そりゃ楽しみだな』


「…それよりその話方どうにかならないの?折角可愛いのに…」


『オレが可愛いワケがねぇ。話方も今さら変えるつもりはねーよ。それよりこの街の住人を見掛けねぇんだ。どっか行ってんのか?』



前に出てきたスイラを片手で制しながら尋ねる。今はお昼。夜でもないのにこの静けさは妙だった。



「それがね……」



その話を聞いた途端、レインは柄にもなく研究所を飛び出した。




  
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