神ノ定メ 本
□第4夜
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「これは奇っ怪な。潰されていた左目が再生し始めている」
とある一室にはアレンと年老いた老人。その老人は、ロードによって潰されたアレンの左目を診ていた。
目は誰がどう見ても痛々しいもの。普通の人なら再生することはない。が、その左目はなぜか再生し始めていた。
「我らはブックマンと呼ばれる相のもの。訳あってエクソシストとなっている。あちらの小僧の名は“ラビ”私の方には名はない」
老人がアレンに向かって手を差し出す。その手をアレンは握り返す。
「ブックマンと呼んでくれ」
二人は手を取り合った。
「コムイさん入りますよ」
コムイがいるであろう病室…レムとリナリーの病室の中にアレンは入った。中には予想通りコムイはいたが…。
レムとリナリーが眠っているベッドの周りから何から全てが、コムイによって持ち込まれた書類で埋め尽くされていた。
「コムイさん!」
起こそうとコムイの体を揺らすが、一向に起きようとしない。その様子に溜息を吐くと、コムイの耳元でとある言葉をささやく。
「レムとリナリーが結婚しちゃいますよ」
そう囁けば勢いよく起き上がり、何処から取り出したのかドリルを構えるコムイ。ホントどこから出したこの人。
しかし、レムとリナリーが寝ているところを見て、さっきのが嘘だと気付いたようだ。
いい加減普通に起きてほしい。毎度毎度ネタを考える身にもなってほしいものだ。
「アレンくんか……なんだい?」
「レムと…リナリーのお見舞いに。まだ目が覚めていないようですね」
「ブックマンの治療を受けたから大丈夫だよ。……レムちゃんは、いつ起きるかまだ分からないけど。
まあ、一生起きなかったら僕が貰い受け」
「冗談もそこまでにして下さい、コムイさん(黒笑)ブックマンか…不思議な医療道具持ってましたよ」
「(アレンくんが…紳士だったアレンくんが黒い…)鍼術といってね中国太古から伝わる針治療だよ。あのおじーちゃんはそれの凄腕の使い手♪」
書類を整理しながら、話しているアレンの方を見ようともしないコムイ。何となく、アレンがここに来た本意が分かっているのだろう。
「……コムイさん。忙しいのに、どうしてわざわざ外に出てきたんですか?
僕やレム。リナリーのため…じゃないですよね。ノアの一族って何ですか?」
「それをウチらに聞きに来たんさ」
コムイが難しい顔をして、その質問に答えようとしたとき、第三者の声が聞こえた。
「正確にはブックマンのジジイにだけど」
いつの間にか書類の間から顔を出し、こちらに向けて笑いかけてくる、眼帯を付けた青年。こちらが頼んでもいないのに語りだす。
“ノア”について語るなもしれぬ青年に影が差す。ブックマンだ。青年は蹴り飛ばされ書類の山に埋もれて行った。
「しゃべりめが。何度注意すれば分かるのだ。ブックマンの情報は、ブックマンしか口外してはならんつってんだろ」
「いーじゃんよ。オレももうすぐあんたの後継ぐんだしさぁ」
「お前のようなジュクジュクの未熟者にはまだ継がせんわバァーカ」
「このパンダジジイ❤」
ギャーギャーと二人で言い争った後、ブックマンがアレンの方を向いた。
「今は休まれよ。レム嬢とリナ嬢が目覚めればまた動かねばならんのだ。急くでない」
そういうと、ブックマンはアレンと青年を病室から追い出した。追い出された二人は互いを見合うと、そのまま外に向かって歩き出した。
「トシいくつ?」
「15くらい」
二人は雪だるまを作りながら、そんな話をしていた。もういい年なのに。
「あ、オレお兄さん。18だもん。15ねぇ〜。
白髪のせいかもっと老けt
「誰が白髪ですか(黒笑)」
…あ、オレの事ラビでいいから。Jr.って呼ぶ奴もいるけど(汗)」
いきなりアレンの黒黒攻撃!ラビは突然の事に冷汗をかく。
「ア、アレンの事は“モヤシ”って呼んでいい?」
「は?(黒笑)」
「だ、だ、だってユウがそう呼んでたぜ」
「ユウ?…ああ、神田の事ですか」
一瞬誰の事だか分からなかったが、この前レムが神田の名前はユウだと言っていたのを思い出し、それで理解できた。
と、同時にそんなあだ名をつけられている事にアレンの黒い部分がより一層わきあがる。
「今度ユウって呼んでみ。目ん玉カッて見開くぜ。きっと。まあ、会うのはもうしばらく先の話になるかもしれねェけどな」
「どういうことですか?」
「ん―オレの予感だけどね、今度の任務はかなり長期のデカイ戦になんじゃねーかな。伯爵が動き出したんだ」
アレンの頭に、先日ロードと出会ったときの記憶が走りぬけてゆく。その時ロードが言い残して言った言葉……
―今度は千年公のシナリオの内容(なか)でね…―
その言葉が引っかかってしょうがない。
「気ィーしめていかねーと…」
ラビが呟き、隣にいるアレンを見る。その顔は何とも言えない表情をしている。
「僕は…アクマを破壊するためにエクソシストになったんだ。人間を殺すためになったんじゃない」
そのままその場から立ち上がり、どこかに歩いて行く。宛てなどないし、ここの土地勘があるわけでもない。
歩き始めたとき、ラビに“モヤシ”と呼ばれ、黒いオーラを少々出しながら、とりあえず街の方に向かっていった。