神ノ定メ 本

□第7夜
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「ふう…どうやらあたしには気づかなかったようだな…危なかったぜ」



木の陰から出てきたレムよりも幼そうに見える少女。その手にはレムが抱かれている。



「しっかし、どうしたんだこいつ。イノセンスを使い過ぎて疲労してらぁ」


『う…ぐ…』


「あ、起きたか」


『僕は、まだ生きて…それより、アレンを…』


「アレン?そいつはどこにいんだ?」


『この森の奥に…』



レムはポケットから包みを取り出す。



『ライ、これを持って、リナリーのもとへ…これを、皆に渡してくださ…』


「おい、大丈夫か!?」



途中で意識を飛ばしてしまったレムを抱え直し、少女はその場から立ち去り、アレンとやらを探しに森の奥へと向かって行った。










✝リナリー&ラビ✝



「大丈夫かリナリー!?ヘロヘロさ!そんなんで…」



ラビのイノセンスの槌を使い、二人は森の中へと向かっていた。



「大丈夫…それより早く…っ、早く三人を…っ」



リナリーはラビにしがみつく。…彼女は、泣いていた。



「空で強い光が見えた。どれだけ探しても、見つけられないの…!!」


「見つかるさ」










そのころアレンのもとを飛び立ったティムは、空の上でアクマ達から攻撃を受けていた。
でもそこはクロス元帥が作ったゴーレムなだけあって、そう簡単には倒れない。



「待てゴラ、金のゴーレムー!!」


「止まらんと撃つぞー!!」



そう言われて止まる奴はいない。ティムは逃げ続ける。ミサイルが大量に飛んできてもうだめかと思ったその時、リナリーがやってきた。



「ティムキャンピー!!」


「オレのミサイルーー!!」



そんなアクマ達の下に火という文字が浮かび上がり、そこから火柱が上がった。アクマ達はそのまま破壊された。










「ティムの映像記録だとここでアレンと別れて、さっきの場所でレムと離れたみたいさ…」



竹林に佇む二人。傍らにはティムがいる。



「レムはどうなったんか分からないけど、アレンはのあと遭遇して左腕を壊されたあいつは、スーマンのイノセンスだけでも守ろうとしたんだ」


「血の跡…ここにいたんだ…さっきの場所にも血の跡があった…でもいない。レムが………アレンくんがいない…!!」



その場に崩れ落ちる二人に、近づいていく一つの影。



「!、ライ…」


ライは口にくわえていた包みをリナリーに渡す。そしてそのままリナリーの手の中に落ちた。



「ライ!?」



そのままピクリとも動かないライ。どうやら力尽きたらしい。その時ラビの無線ゴーレムがブックマンと繋がる。



―「聞こえるかラビ」


「…何?」


―「港へ戻れ。使者が来た」


「使者?」



二人は顔を見合わせると、その場から離れた。










✝港✝



「お久しぶりでございます、リナリー様」



そこに居たのはアジア支部のウォン。支部長から伝言を預かってきたらしい。


「こちらの部隊のアレン・ウォーカーと久遠レムは我らが発見し、引き取らせていただきました」



その言葉にリナリーはウォンに詰め寄る。



「本当に…!?」


「はい」


「レムは…アレンくんは無事なの?お願いウォンさん、今すぐ二人に会わせて」


「貴方がたはすぐに出航なさってください。アレン・ウォーカーと久遠レムとは、ここでお別れです」



静かに、ウォンが言い放つ。その言葉はリナリーの心に冷く鋭い氷の矢となり、深く突き刺さる。



「辛いと存じますが、お察し下さい」


「リナリー、お前もティムとライのメモリーを見ただろ。
レムはイノセンスを強制解放してイノセンスが使い物にならない。アレンは左腕を失ったんだ。
あの時点でどのみち二人はエクソシストじゃなくなった。俺達は、進まなきゃならないんだ」



リナリーは俯き、静かに涙を流した。



「ですが、私どもの船は昨夜の戦闘でひどくやられました。今すぐはとても…」


「心配御無用。本部から新しいエクソシストが来ております。彼女がいれば出航できるでしょう」



船の上にはミランダがいた。確かに彼女ならこの船を治せるだろう。ミランダはイノセンスを発動させ、船を直した。
その様子にリナリーを除く全員が驚く。その意味を勘違いしたミランダは海に飛び込んだ。










船は無事出港し、海の上を滑るように進む。



「コムイ達から?」



船長室にいるラビたちにはミランダから新しい団服が手渡されていた。



「軽くて動きやすいさっ」


「でもとても丈夫なんですって」



ピョンピョン跳ねるラビを見て笑いながら言うミランダ。ミランダは階段に座り込むリナリーを見る。



「心の整理がつかんのだろう。リナ嬢は、昨夜2人のもとを離れた事を悔いておる。自分を責めているんだ」



その時、ラビがいきなり窓ガラスを割る。



「いい加減にしろよ…仕方ないことだったんさ………っオレらは昨日必死に戦った。どうしても、助けられなかったんだよ……っ

戦争なんさ、しょうがねェだろ!!
諦めて立てよ!!!




リナリーの目から涙があふれる。それを見た他のメンバーはラビを睨む。



「?、その包みはなんであるか」



クロウリーがラビのポケットから飛び出ている包みを指差す。



「あ?ああ、これはレムのゴーレムが持っていモノさ。まだ開けてはねェんだけどよ…」



テーブルに近寄り、包みを逆さにして中身を出す。出てきたのは銀の鎖でつながれた赤い羽だった。



「んだ、これ…名前が書いてある…」



羽の先に小さな水晶がついていて、そこに小さく名前が彫ってあった。



「あ、これはオレのだ。これはクロちゃんの、これはジジイ、リナリー、ミランダだな」



一人ひとりに手渡していくラビ。全て渡し終えると、自分のを首に掛けた。



「……これ、いつ渡そうと思ってたんだろな…」


「…あの二人は死んだとは思えん。予言が本当なら、こんなことぐらいでは死なないはずだ…」



ふと、ポツリとこぼすブックマン。その言葉にリナリーが振り向く。



「室長殿に頼み込んでまでクロス部隊に入れてもらったのは、あの二人に興味があったからでな。
あ奴らは、千年伯爵を倒すものではないだろうか……」



ならばこんな事で死ぬはずがない…



ブックマンは割れた窓の外を見た。
そこへ窓ガラスが割れた音を聞きつけたのか、マホジャが入ってきた。割れた窓を見てすごい怖い顔をする。



「こいつが割りました」



ブックマンとクロウリーはすぐさまラビを指す。マホジャはそのまま迫ってきた。



「だ、大丈夫ですよ!」



ミランダが止めに入る。窓を見れば確かに綺麗に治っていた。
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