神ノ定メ 本
□第8夜
1ページ/6ページ
「ちょうど半分。天候も悪くないし、これならあと二日程で江戸に着ける。このままいければ…」
アニタは一人、部屋で残りの航海の距離を測っていた。今はちょうど半分。何も無く、順調にいければ、あと二日ほどで江戸につく。
―コンコン
部屋のドアがノックされる。入ってきたのはリナリーだ。戦闘によって失くした、髪どめの代わりを貸してほしいとのことだった。
アニタは自分が座っていた椅子にリナリーを座らせると、引き出しを開けて今まで大切にしまっていた髪どめ出し、リナリーの髪をとめた。
「母の形見なんだけど、どうかしら?」
「え?良いんですかそんな大事なもの…っ!?」
「私が18になったら譲り受ける約束だったんだけど、その前に母がアクマに殺されてしまって。何だか付けられなくなっちゃったの」
「アニタさんのお母さんも教団の協力者だったんですよね…?」
「ええ。クロス元帥に一目ぼれしてサポーターになったのよ。単純よねぇ。
人の事言えないんだけどね。私もあの方のために何かしたくてこうしてるワケだし」
「クロス元帥が、生きていると信じますか…?」
言いにくそうにリナリーが塔。その質問に一瞬アニタの手が止まる。一度目を閉じ、開くと、ポツリと言った。
「………信じてます。それだけが、私の力だから…」
✝甲板✝
一方、ラビは甲板でアレンが殺された場所に落ちていたスペードの1のトランプを持ち、物思いにふけっていた。
「味方じゃない…記録のために、紛れ込んでいるだけ。ブックマンに、心はいらねぇんさ」
海に目を落とし、見つめる。その後ろに、何者かが降り立った。
✝船長室✝
「あ…っ」
船長室にいたミランダが、何かを感じ取った。
「ど、どうしたであるかミランダ?」
震えているミランダを心配し、ブックマンとチェスをしていたクロウリーが問いかける。
「今…この船のどこかで連続して時間回復(リカバリー)が起きています…甲板…?攻撃を受けています!!」
ミランダが叫んだ。
✝船上✝
「第二マストが折れた!!!」
「来た!」
「敵襲…っ、アクマです!!」
船上には一帯のアクマがいた。そいつは両手の親指と人差し指で長方形を作ると、倒れ伏しているラビを映した。
「題名 〔エクソシストの屍〕」
「劫火灰燼 ―直火判―」
その時、アクマの横からラビの槌が下りてくる。
「クソッ無駄な怪我した」
ミランダが時間回復(リカバリー)をしているため、怪我が回復するのだ。
ラビは槌を当てたアクマを見てみると、変わらずに腕を組んだままラビを見つめていた。
「題名 〔なぜ回復する…??〕」
「(火判の直接攻撃くらって破壊できていない…っ!?)」
アクマは槌をはじくと、ラビをマストの方に飛ばす。柱に頭が激突し、またリカバリーされる。
「痛…っ」
「題名 〔頭部粉砕〕」
いつの間にか目の前にいたアクマ。その拳は明らかにラビの頭めがけて飛んできていた。反応が遅れ、よけられない。
「ラビィーー!!」
下にいたマホジャが叫ぶび、辺りに衝撃音が響く。沈みかけていた船が持ち直し、一斉にリカバリーされた。
「!?」
ラビは攻撃されていなかった。拳がギリギリで止まっている。アクマとラビの間には黒く、無数の鋭い針がある。
「天針(ヘブンコンパス) ―呪縛の針「北ノ罪」!!!―」
その声とともに、アクマは黒い針に包まれる。その上に立っていたのはブックマンだった。
「題名 〔なぜトドメを刺さない?〕」
「トドメは刺す。その前に2、3質問があるのだ。貴様、何処から来た?」
「題名 〔エシは日本人絵師の魂から造られた〕」
「海のど真ん中で人間を狩りに来たわけではあるまい。伯爵の命令か?」
その問いかけに針だらけにされたエシは鼻で笑う。
「クロス・マリアンの情報が聞きたいのか?」
口を大きく開けたエシはブックマンの右腕を噛んで空高く舞い上がる。ラビはすぐさま伸で追った。だが…
ドオン
「題名 〔老人と月〕」
空中で爆発音がしたかと思うと、黒い針が上から降ってきた。それと同時にラビの腕の中に落ちてきたブックマン。死んだように動かない。
「じじい!!じじい!!」
エシはその様子を空中であざ笑うかのように見ているだけだった。その時、エシが何かを捉えた。
「船に戻って、ラビ」
「リナリー!! !?痛…っう…っ」
出てきたのはリナリーだ。追いかけようとした時、船から離れすぎたためか、体に怪我が戻り始めた。
「題名」
「お前は私が破壊する」
リナリーは一人、エシに突っ込んでいった。