神ノ定メ 本
□第9夜
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✝江戸内部✝
千年公からの強力な送信を受け、制御がきかなくなりつつあるちょめ助が悶えていた。呻き声をあげていて、本当に苦しそうだ。
「しっかりしろさちょめ助!!伯爵が日本中のアクマを呼んでるってどういことだ」
「どうしたというであるか?」
「おいちょめ助!!」
ちょめ助を囲み、話しかける。冷汗がだらだらと流れ、額に浮き出ているペンタクルが鈍く輝いて見えた。
「オ、オイラはアクマだけど…っ、マリアンの改造で伯爵様の命令を聞かなくても行動できるようになったっちょ…
っでも…この伯爵様からの、送信は、つ…強…過ぎ…る…」
何かに取りつかれたかのように、いきなり呻き声も冷や汗も止まる。目は黒く染まっていた。
「ごめんちょラビ…オイラ…伯爵様のもとに行かなきゃ…江戸帝都に今…千年伯爵様が来てるっちょ…」
「千…っ?」
「伯爵が、江戸にいる……」
ちょめ助により知らされた、思わぬ情報。それは今、江戸内に伯爵が来ているという事。
それを聞いたラビ達は、江戸城に向けて走り出した。
✝江戸城上空✝
江戸城の上空、屋根についている飾りの上に、千年伯爵は器用に立っていた。その周りには夥しい数のアクマがいる。
「総攻撃ですアクマたチ❤❤日本全軍で元帥どもを打ち破れェ❤」
アクマ達が一斉に移動しようとしたその時、一つの酒屋の屋根から火でできた蛇が千年公に向かって襲いかかった。
「喰らえ」
その蛇は千年公を喰らう。千年公が立っていた飾りが崩れ落ち、その場に居合わせたノアたちが茫然とする。
「アホな❤」
だがしかし、その蛇も千年公のよって一瞬で消し飛ぶ。
「元帥………の攻撃ではないですネ、この程度ハッ❤出てきなさイ…ネズミ共❤」
酒屋の煙がはれると、その場にはラビたちエクソシストの姿。その横には不安そうに顔を俯けている、ちょめ助もいた。
「元帥のもとへは行かせんぞ、伯爵!!」
「勝ち目があると思ってるんですカー?❤」
「ほう、あのふざけたデブが伯爵か、ブックマン」
「そうだ」
「あれが“製造者”…」
「あれが…私達の、宿敵」
目の前には先ほどとあまり数が代わらない夥しい数のアクマ。その中央にはレロを使い宙に浮いている伯爵と、取り囲むようにノア達がいる。
「マジでやり合うつもりだっちょか!?この大群にノア様が4人もだっちょ!!!100パー死ぬ!!!」
「あっちがすげぇのは分かってら。けど、別に負け戦をする気はないさ」
「ラビ…でも…こんなのやっぱり、負け戦だっちょよぅ…」
「ゴタゴタ煩い奴だ。負けるかどうかやってみんと分からんわ!」
「そうそう。もしかしたらすっげーボロ勝ちしちゃうかも…しれねーだろがっ!!」
ラビとクロウリーが飛び出す。向かう所は千年公のもと。一方、千年公側でも、進んで立ち向かっていくノアがいた。
「千年公、オレが行く」
その顔はまるで極上のおもちゃを与えられた幼い子供の様に歪んでいた。ラビとクロウリーはその向かってきたノアと向かい合う。
「お前は…っ」
「あん時の旦那と、眼帯君じゃねぇか〜」
「あの男は、ティムのメモリーにあった…忘れねぇぞ、そのツラ…!!あの夜の…っ、アレンを殺したノア………!!」
向かい合っていたのはアレンのイノセンスを破壊したティキ。その左腕はまるでアレンの対アクマ武器のように変形している。
「今ちょっと暇だからさ、また相手してよ」
「…上等だ。このほくろはオレが戦(や)る。誰も手ぇ出すなさ!ボッコボコにしてやんねぇと、気がおさまんねェ」
槌を構え、殺気を抑えずに放つラビは、いつものおちゃらけているラビの面影は微塵もなかった。
…彼にとって、アレンは表面上だけではなく、本当の友人だったのか…?
「何?イカサマ少年殺した事そんな怒ってんの?もしかして友達だった?」
「うるせェ」
「あーーー友達だったんだ」
「うるせェ!」
「もしかしてそこの可愛い娘もイカサマ少年の友達?殺し損ねたイカサマ少女もか?」
「…っ!!うるせェ」
「ごめんな。悲しいよな。分かるよ。オレにもいるからさ、友達?」
「うるせェ」
ティキの言葉に、ただ同じ言葉を繰り返し返すラビ。殺気は今だ、ただ漏れ状態のまま。
「分かるよ少年」
「うるせェ」
「友達が死ぬと」
「うるせェ!」
「悲しいよな」
「うるせェェェ!!」
牙をむくラビ。途中気になる言葉もあったが、今は自分の目の前にいるノアを倒す…いや、殺すことが第一だ。
「んな怒んなって。奴は生きてるらしい。ついでに少女もな。もう直来るかもしれないよ。会いたい?
ただし、お前らがそれまで生きてればだけど」
その場にいたエクソシスト側の者が驚く。と、同時に生きているという希望が見えた。
「時間はかからないと思うぜ?アレン・ウォーカーのイノセンスはオレが壊したから。使いのアクマに半殺しにされて、拉致られりゃすぐ来る。
久遠レムはどうだかわかんねェけどな。でも、どのみち強制開放でイノセンスは使いモンになんねぇだろうなぁ。
もしかしたら、息絶えてくるかもなぁ?2人ともよ」
✝アジア支部✝
アクマは、ティキが預けたティーズの案内でアジア支部の目の前まで来ていた。
悪魔の足元には、千年公達が作り上げたであろう、方舟が浮いていた。