騙し合う銀 本
□第4幕
2ページ/2ページ
「京都から来ました、花開院といいます。フルネームは…花開院ゆらです。どうぞよしなに…」
『(マジで来た…あー、私生きて帰れるかな)』
朝のHRでやってきたのは朝嗅いだ匂いの原因。自己紹介が終わった後、騒がしくなる教室。
『(何が楽しいんだか…あ、氷麗とか大丈夫かな)』
窓から空を見上げる。…今日も青いなー
〜放課後〜
時間は早く過ぎるもので、もう放課後。授業はもちろん聞いてない。そんなことしなくてもテストで点取れてるし。
(毎回テストでは3位以内。そこから落ちることは絶対にない)
…時間過ぎるのが早いとかナシね。
『(キザワカメ…懲りずにまだあの話してる)』
話の内容は前回の旧校舎の件。あそこにいた妖怪は不良ということにされているが、あいつは今だ認めようとはしていない。
「町内の怪奇蒐集マニアの友人から買い付けた“呪いの人形と日記”がある!!
あれを使って必ずや自論を証明してみせる!!」
なにやら熱くなっている様子。話的について行きたくはない。
「その話…本当?それ…私も見たいんやけど」
今までクラスメイトに質問攻めにされていた花開院が目をキラキラさせて清継に近づく。
「いやー嬉しいよ!!分かってくれる人が居て!!」
「珍しいの?」
「そんなことはない!!有志はほかにもいるよ!!ここにいる鳥居さんと巻さんもそうだ!!」
「え!?」
「私ら!?」
いきなり指名されたことに慌て、そのままそれぞれの理由を付けて帰って行った。
そして通りかかったリクオとカナも巻き込まれていた。逃げられはしない。
「それに…奏さんも!!」
『チッ』
あからさまに舌打ちをするも、あいつは気にしない。そのままついて来い!と先を行く。
『私ここに残るから。リクオ達行きなよ』
「え!?奏ちゃん!?」
「そんな無責任な!」
上からカナ・リクオ。二人とも私の机の前にやってきて腕をつかむ。
「行くよ!抜け駆けは許さないんだから!」
『チッ』
「女の子なんだから舌打ちしない」
リクオに軽く頭を叩かれながら教室を出た。
〜キザワカメの屋敷〜
「ようこそ、僕のプライベートルームへ」
プライベートルーム……無駄にキラキラしたでかい部屋がか。
『(めちゃくちゃ妖気が充満してるんだけど)』
元をたどれば一つの人形。“呪いの人形”とはこれらしい。日記らしきものも傍に置いてある。
『(付喪神か…)』
日記を手にしたキザワカメがそれを読み進めていく。
「2月22日…引越しまであと7日。昨日、これを機に祖母からもらった日本人形を捨てることにした」
おいおい、人形の目ぇ見開いてるぞ。気付かないのかよ。お前の見たがってた妖怪だぞ。
「といっても、機会を伺ってはいたが本当は怖くて捨てられなかっただけで、雨が降っていたが思いきって捨てた…」
リクオが人形に目を映した。途端に見開く目。そのまま何を思ったか人形に抱き付いた。
「するとなぜか捨てたはずの人形が玄関に置いてあり、目から血のような黒っぽい…」
「どぉしたー!!リクオ―――!!」
「貴重な資料にタックルかますな―――!!」
「ハハ…ごめん。聞いてたらかわいそーで!」
「んなアホな」
すぐさまキザワカメがリクオを横に押しのけ、人形の安否を確認する。
人形は先ほどと変わらぬ姿でそこにいた。
『(血ィ拭いたな…)』
「まぁいい。次だ…」
人形が無事なことを確認すると、キザワカメは日記を読み進める。
「2月24日。彼氏に言って遠くの山に捨ててきてもらった。その夜…彼氏からの電話
“助けてくれ…気づいたら後ろの座席にこいつが乗ってた…”」
今思ったがこの日記の持ち主は女性で、彼氏持ち。なぜか人形を捨ててくるのを彼氏に頼んでいる。
しかも、この日記まるで誰かに読まれることを想定したかのように書かれている。
『(こうなることを想定してたとか…?)』
「ど、どーなるの?それで」
「考えてみれば、昔から変だった…この人形…気づけば髪が伸びたようにも見えた…」
確かに人形の髪、伸びてる。この人形の持ち主、霊感あるんじゃないのか?
「あ…若…これ…」
「あぁ…まずいぞ…」
斜め後ろで小さな呟きが聞こえる。氷麗、凍らせるとか言うな。私達まで凍えるっての。
何より……純粋な血をひく陰陽師が居るからな。
「2月28日、引越し前日。おかしい…しまっておいた箱が開いている…」
「日記を…読むのをやめてぇええ――――!!」
後ろでは刀を持った人形がすごい形相でリクオに襲いかかってきている。リクオが止めるも、もう遅い―――
ゴッ
『!』
「浮世絵町…やはりおった。陰陽師、花開院の名において、妖怪(もののけ)よ、あなたをこの世から…滅死します!」
そこには札を片手に構えるゆらが居た。