騙し合う銀 本

□第6幕
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今日は日曜日。


…察しのいい奴はもう解ったよな?
そう、今日はリクオの家にキザワカメをはじめとする奴らが来る日だ。

私はもちろん“不参加”だ。誰が好きで陰陽少女と会わなきゃいけない…










『…とかナレーションしながら、カラス天狗の頼みで来てるんだよなー』



現在地は奴良家の台所。現在の姿は狐そのもの。
そう、今妖怪化してるまっ最中だ。もちろん、尻尾は一本にしてある。



『まさか昼前もなれるとはな…』



多少疲れはするが、何ら支障はない。



『なんかこのごろ力そのものが巨大化してきてる気がする』



毛並みを普通の狐にすることまでも出来たのだ。
妖気もほとんど漏れてなく、陰陽師に気づかれはしない。



『とにかく、このままフラフラしてるか』



今回のこと、瀬良と白銀、黒金には大反対された。自ら命を放り出すようなものだと。
ま、こんなことぐらいで死ぬわけないが。

それにしても…



『疾風の報告は意外だな…』



偵察にと出していた疾風が、1番街に妖怪を発見したのだ。しかも鼠。



『あそこは良太猫率いる化け猫達が納めていたはずだけど…まさか…ね』



猫が鼠に負ける…そういう妖怪で思い当たるのはあれしかない。



『くそ、厄介だ』



後ろ足で頭をかく。出来る限り狐らしくしていなくてはいけないな…



『大きさはもうちょっと小さめ、か』



いつもは白銀たちと同じぐらいの大きさなのだが、そんなのがうろついていたらすぐわかる。



『…めんどくさ』



引き受けなければよかったと、心の底から思った。ま、後の祭りだが。



『…来た』



陰陽少女が屋敷内に入ってくる気配がした。同時にキザワカメの鼻をつくにおいが漂ってくる。



『鼻が潰れる…』



前足で鼻を押さえ、唸っていると目の前にぬらりひょんがやってきた。



「こんなとこで何やっとるんじゃ、奏ちゃん」


『ぬらじぃ…何って…頼まれたからいるの』


「質問の答えになっとらんぞ」


『ただの護衛』


「誰の」


『リクオの』



鼻から前足をどかし、その場で伸びをする。



『狐に見える?』


「ばっちりじゃよ。妖気が全く感じ取れん」



札もっといてよかった。何かあったら容赦なく叩きのめすつもりだ。もちろん、花開院をだ。



『じゃ、またね』


「おう、頑張れ」



ぬらりひょんと別れた奏は、皆の気配がする一室へと向かった。



『…ここか』



先程毛倡妓とリクオの気配が中にあったが、今はない。



『…ん?』



部屋の中からリクオの気配が消えたかと思うと、ほかの奴らも一斉に移動し始めた。
リクオと向かっている方向が違うため、案内されているわけではないらしい。しかも…



『先陣切ってるのが陰陽少女かよ…』



きっとこの屋敷にちらつく妖気を探っているのだろう。
後ろから慌てて追いかけてきたらしいリクオの気配が感じ取れる。



『…大浴場、仏間、だな…先回りして忠告してくるか』



自分の目の前で仲間が消えていくのを見たくはない。奏は急いで大浴場へと向かった。
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