騙し合う銀 本
□第8幕
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あれからリクオが熱を出したりいろいろあった。そして今、何故か私は電車に乗っている。メンバーにはあの陰陽少女もいる。
清十字探偵団出動だー!と、清継が先程叫んでいたのだ、アレ絡みだろう。そう、アレとはもちろん妖怪、だ。
「奏もやらない?」
『私がやると思う?カナ』
「そー言うと思ってた」
私の横に居るカナが笑った。さすが幼少から一緒に居るだけはある。
「くだらないとは何だ!妖怪ポーカーをバカにするな!!」
『ポーカーはバカにしてないよ。ただ、そんなんで知識を取り入れた気になってるワカメ、お前をバカにしてる』
「…あいからわずクールだね、奏」
「カッコいーよー奏」
「流石奏ちゃん」
カナ、紗織、夏実にそう言われた。三人から目線を離し、窓から外を見る。
『(ホント、何も感じない奴は呑気でいいよな…)』
「ふふふ…妖怪先生からの宿題…自力で待ち合わせ場所の“梅若丸の祠”を探せ!流石先生…やってくれますね…
“運”と“感覚”をみがいていればおのずと見つかる…ぼくならきっと…」
「清継くん〜〜〜、別荘は〜〜〜、温泉は〜〜〜?」
「そんなのは夜だ!!さぁ行くよ!!」
「うはぁ〜、温泉楽しみ〜〜〜」
夏美と紗織がそう呑気に言い合うのを見て、目の前にそびえ立つ山を見上げた。
『(梅若丸…牛鬼の組か)』
―1時間後―
「なんだよ〜〜〜〜〜、ず〜〜〜〜っと山じゃんか!!」
「当たり前だ!!修行だぞ!」
「足痛い!」
主に騒いでいるのは紗織だ。
「うう〜〜〜、本当にこんなところで待ち合わせなの〜〜〜」
「人なんていなさそーですけど―」
「バカだねー島くん。人がいないからこそ妖怪が出るんじゃないか〜、多分ね〜」
「多分……ですか…」
「うん?なんやろ…アレ…」
陰陽少女が何かに気付いた。指さす方向には霧で隠れた小さな祠のようなもの。
「小さな祠に…お地蔵様が奉ってある」
「どこ?」
「霧が深くって……よく分からんなぁ…何か書いてある」
「う〜〜〜ん、読めないぞ?」
「ちょっと見てきます」
「“梅若丸”って書いてあるよ!!」
隣にいたリクオが大きな声で言った。それに対し疑うような目を向けるカナ。
「あっ、ホンマや」
「梅若丸の祠…きっとここだ!!やったぞゆらくん!!流石だな!!」
「はぁ」
「意外と早く見つけたな…流石清十字怪奇探偵団!!」
その時、藪の中から姿を現したのはビールっぱらの変なオヤジ。
「ああ!!貴方は!!作家にして妖怪研究科の…化原先生!!」
「うん」
「お会いできて光栄です!!」
「うんうん」
がっしりと気味悪い先生の手を掴み、一人感動しているキザワカメ。
『(…何か、いる…)』
ふと傍にあった木の上を見た。
『(風もないのに、あそこだけ葉が揺れてる。誰かいたのか)』
別に気にすることもないだろうと、視線を下に下げた。だが、あの男は何か妙だ。
「これは…梅若丸って…なんですか?」
「いやぁ…嬉しいなぁ〜〜〜。こんな…若い年で妖怪が好きな女の子がたくさんいるなんて…」
…妙なうえに変態だ、このジジィ。
「うむ…そいつは…この山の妖怪伝説の主人公だよ」
側にあった石に腰かけ、男の話を聞く。
「梅若丸…千年ほど前にこの山に迷い込んだ、やんごとなき家の少年の名…
生き別れた母を探しに東へと旅をする途中、この山に住まう妖怪に襲われた」
「ほう…妖怪に……」
「この地にあった一本杉の前で命を落とす。だが母を救えぬ無念の心が、この山の霊障に当てられたか、哀しい存在へと姿を変えた」
梅若丸は“鬼”となり、この山に迷い込む者どもを襲うようになった。
「その梅若丸の暴走を食い止めるために、この山にはいくつもの供養碑がある。そのうちの一つがこの“梅若丸の祠”だ」
話を終えると化原が少し見て回ろうと提案し、一行はさらに山の奥深くへと進んだ。
「すっごい霧深いなぁ…全然晴れてたのに…」
「ん?なんだこれ…」
「それは爪だよ」
「爪!?」
目の前には紗織の横にあるものと同じ、またはそれ以上の“爪”が散乱していた。
「ここは妖怪の住まう山だ。もげた爪ぐらいで驚いてちゃー困る。山に迷い込んだ…旅人を襲う妖怪…名を“牛鬼”という」