騙し合う銀 本

□第9幕
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―露天風呂―





「どうしたのゆらちゃん?」



突然湯船から立ち上がり、辺りを見回すゆらを不思議がる夏美。




「何か…視線を感じて…」


「え!?うそ!」



今度は紗織が立ち上がった。



「あいつら〜!ちょっと…いるなら出てきなさいよ」



露天風呂の屋根から現れたのは、紗織の予想通り島達……ではなく、馬頭丸の子分(妖怪)であった。
上から見下ろしてくる妖怪。その姿に夏美、沙織は悲鳴を上げ、ゆらは式神を構える。


《おー出てきたー。連絡しないと》



茂みの中から様子をうかがっていた白銀は、黒金に報告した。










《……奏》


『…来た?』


《ああ、来たようだ》


『じゃ、ゆらが式神出したら応戦してって伝えて。そっちの式は白銀に任せる』


《分かった》










《…えー、任せるったって…》



他の式神にも奏の言っていた事を伝えた。それに頷く彼ら。もうー、少し話して欲しいよねー。



《花開院が式神を出したらって…いつだよー》



向こうを見やれば、ちょうど妖怪達が花開院達に襲いかかろうとしていた。



「禄存!!」



出した。出てきたのは鹿の式神。



《じゃー、僕らも行こうか。奏……じゃなくて姫に言われたし》



まず白銀が茂みから姿を現した。もちろん、通常サイズに戻ってだ。



「な、あんたら…!」


《また会ったねー。僕らは姫の指示で此処に留まってたんだよー。不本意だけど、君達を助けるようにね》


「姫…?ああ、銀狐か」


《そーそー。覚えてたんだ》



合図とともに青竜、白虎が姿を現す。



「な、四神やと…!?」


《姫はお前なんかとは格が違うんだよー。本っ当に不本意なんだけど、姫の言う事は絶対だからねー。君の援護をしてあげるよ》


「…そら、心強いやないか」








―森―





『…こっちも動き始めたな』



数m先では、突然清継と島が分かれた道で別々の方向に歩き始めた。仕方なく、リクオは清継を。氷麗は島を追った。



《どーする?》


『もちろん追うさ』


《どっちをだよ》


『氷麗の方。ほら、急いで』



走り始めた奏についていくため、必然的に走りだす黒金。



《若頭の方はいいのか?》


『もし狙いがリクオなら、側近である氷麗は邪魔な存在でしかない。先に消されるとしたら氷麗の方だ』



予想は的中。リクオと別れた瞬間、氷麗の頭上に牛頭丸が現れた。



『……っぶねーな』


《まったくだ。オレは闇討ちは嫌いだ》



氷麗を抱きかかえ、牛頭丸の一撃を回避した。



「奏様…!?」


『氷麗、お前はリクオの側近だろ?周りの注意を欠いちゃいけない』


「す、すみません…」



氷麗を地面に降ろし、牛頭を睨みつける。



「お前、銀狐の娘だな?なるほど、お前は…雪女、ね…」



先程凍らしたのか、凍った刀を見て牛頭丸は言った。



「刀を納めなさい。今だったら貴方の事、咎めないから。リクオ様の命令で人を追っているの。ほっといてくれる」


「くくく…」


「!? 何がおかしい。何を笑っているの!?貴方…誰に手を出しているか分かってないよーね!!私の主は…」


「ガタガタ煩いよ、女」


『氷麗!』


《んだこいつ、はえぇ…!》



いつの間にか氷麗の前に移動していた牛頭丸は、氷麗の足に刀を刺していた。当然、そこからは血が吹き出た。




  
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