リングの光T 本
□標的20
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〜黒曜ヘルシーランド〜
制服に血がつき、トンファーを構えているのは雲雀。その血は彼の血ではなく、全て相手の返り血。
雲雀の周りには彼にやられた者たちが大勢倒れ込んでいた。
「(手ごたえなさすぎ。子狐の方がやりがいがあるね)」
ヘルシーランド内に入ってからも、命知らずな黒曜生が大勢襲いかかってくる。突然の奇襲にもかかわらず、雲雀は余裕で倒していった。
「やあ」
「よく来ましたね」
一番奥の部屋に入ると、ソファーに座る人影。
「ずいぶん探したよ。君がイタズラの主犯者?」
「クフフ、そんなところですかね。そして君の町の新しい秩序」
「寝ぼけてるの?並盛に二つ、秩序はいらない」
「まったく同感です。僕がなるから君はいらない」
「それは叶わないよ」
雲雀が持つトンファーから棘が出てくる。そのまま主犯者へと向かって歩み始めた。
〜同時刻〜
ブチッ
「ひっ」
リボーンが持つ形状記憶カメレオンのレオンの尻尾が切れた。ツナが気味悪がる中、リボーンは切れた尻尾を掴む。
「これが起こるってことは…不吉だ」
ポツリとつぶやいた言葉は、ツナの耳には入らなかった。
〜黒曜ヘルシーランド〜
「座ったまま死にたいの?」
棘のついたトンファーを振り回しながら、一歩づつ近づいていく。
「クフフ、面白いことを言いますね。立つ必要がないから座ってるんですよ」
「………君とはもう、口を利かない」
雲雀は口をつぐむ。ムカついたから、という何とも一方と気な理由で。それでも男に近づくのは止めない。
「どーぞお好きに。ただ今喋っとかないと、二度と口がきけなくなりますよ」
一方座っている男は一向にその場から動こうとはしない。それどころか挑発するような事を言っている。
不覚にも、その言葉に一瞬ではあるが、雲雀は気圧された。
「ん――?汗が噴き出していますが、どうかなさいましたか?」
「黙れ」
「せっかく心配してあげてるのに。ほら、しっかりして下さいよ」
いや、気圧されたのではない。なんだ?これは。
勝手に汗が噴き出し、立っていられない様なぐらいフラフラする。この感覚は…
「海外から取り寄せてみたんです。クフフフフ、本当に苦手なんですね。桜」
男がボタンを押した瞬間、天井一面に桜が咲き誇る。雲雀の目が、見開かれた。
〜並盛中央病院〜
「大丈夫なのか!?」
レオンはいろんなものに変わりまくっていた。タコ、トーテムポール、その他いろいろ…
「尻尾が切れて、形状記憶の制御が出来なくなってるんだ」
意味はよく分からないが、この後も姿は変わり続けるようだ。
「どきなさい!!!また並中生がやられた!!」
担架に乗せられてきたのは、先ほど目の前を通ったばかりの風紀副委員長の草壁。血だらけになりながらも咥えている草は健在だ。
「4本か」
ツナにレオンを渡すと、担架に飛び乗り草壁の口をこじ開ける。意味不明な事を呟くと、すぐに飛び降りた。
「おい何してんだよ!!」
「他に考えにくいな。ケンカ売られてんのは、ツナ、お前だぞ」
「へ!?」
突然言われたのは、思ってもいなかった事だった。
〜黒曜ヘルシーランド〜
「おっと」
倒れこみそうになる雲雀の体を、髪を掴んでとどめる。雲雀は血だらけだ。いつもの彼とは似ても似つかない。
「なぜ桜に弱いことを知ってるのか?って顔ですね。さて、なぜでしょう」
髪を離し、同じ視線になるよう男はかがむ。雲雀は何も答えない。
「おや?もしかして桜さえなければと思ってますか?それは勘違いですよ。君レベルの男は何人も見てきたし、幾度も葬ってきた」
その場で男は立ち上がると桜を背景に雲雀を見下ろす。
「地獄のような場所でね。さぁ、続けましょう」
そう言うと、先ほどと同じように雲雀を蹴り始めた。なすすべなくやられていく雲雀。
その様子を、一人の少年と少女が黙って見つめていた。