リングの光T 本

□標的21
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少女の髪の色は光加減によって変わる漆黒のショートヘア。瞳は翠。



「(あれがボンゴレ10代目…大したことなさそう。でも、今回助けるのは一度きりって9代目の依頼書には書いてあったし…今がベストかな)」



少女は手に集めた風の塊を鋭い刃に変えて千種に向ける。



『…こんな所で何してるんですか?“紅狐”さん。…いえ、風凪翔さん?』


「!お前は…?」



瞬時に後ろを振り向くところからして、かなりのやり手なのが分かる。



『ボンゴレの敵でも、あなたの敵でもないですよ。そうですね…“創造神”とでも言っておきましょうか』


「…ドゥラドファミリーの10代目か」


『おや、知ってましたか』


「知ってるも何も、裏の世界では有名な話」


『…それで、あなたはなぜここに?返事次第では…』


「ちょっと待った。勘違いしないでよ。私はボンゴレの9代目の依頼で来てるの。10代目ボス候補の手助けを一度だけやるようにね」



彼女が手に集めていた風を消し、肩をすくめて見せる。カレンの顔からも険しさが消えた。



『そういう事ですか。でもあまり関与し過ぎると彼の成長につながりません』


「そういえばあなたには先を見透かす力があったんだっけ」


『そういうものはありますね。ボンゴレに伝わる“超直感”とは異なりますが』


「そ。ま、私は私の仕事をするだけ。今回はあのヨーヨー使いの針を一度だけ、弾けばいっか」



再び手に風を集めると、それを千種に向かって放つ。その途端、獄寺に向かっていた針が全て弾き飛ばされた。突然の事に獄寺、千種も驚きを隠せない。



「誰かいんのか!」


「おっと危ない。あなたもこっちに隠れて」



翔に手を引っ張られ、伏せる。幸いにも姿は見られずに済んだようだ。



『風を操るんですか…』


「まぁね。じゃ、仕事終わったし帰るね。貴方とは、またどこかで会えるといいね」


『…僕は“貴方”じゃありません。カレンです』



真面目に言うと、翔はハハッと笑った。



「ドゥラド10代目の本名を知れるとはね。驚いたなぁ」


『僕の本名、知れ渡ってないようですね』


「情報を大量に持っているフリーの殺し屋の私が持ってないんだから、そこまで広まっては無いと思うよ」



その言葉に一応安心した。



『それは安心です』


「じゃ、今度こそ本当のさようなら」


『さようなら』



彼女…翔は風をまとい、まるで空を飛んでいるかのように去っていった。



『また、会えるといいですね…』



眼下ではまた激しい戦いが繰り広げられている。向こうからはツナが走ってくるのも見える。



『…帰るの、もう少し遅らせればよかったです』



後悔先に立たず。もう、翔の姿は無かった。本当に速い。
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