リングの光T 本
□標的23
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「これでいいわ」
「どもっス」
山本は犬にかまれた腕をビアンキに治療してもらっていた。
その様子を情けない顔で見つめるツナ。自己嫌悪しているのだろう。
「チビ、わりぃ。バット壊しちまった」
「気にすんな。スペアやるから」
「おっサンキュー」
どこからか山本のバットのスペアを取り出す。替えがあったのには驚いた。
「まっ、でもメガネヤローはまだ寝てるらしいし、アニマルやローは倒したし、意外と簡単に骸をぶっ飛ばせそうですよ」
『そんな簡単に事が運びますかね…これも罠だという可能性もありますし』
「ホント、めでてー連中だぜ!!」
「!」
穴の中から声が聴こえた。あのあと、気絶した犬を岩に縛り付けて、山本とツナを引き上げたのだ。
「引っかかったなー。おまえたちに口わらねー為に、オポッサムチャンネル使ったんだよん!!」
オポッサムとは、死んだフリをするのが得意な動物である。
「でも、よーく考えたらお前達に何言っても問題ないじゃん!!
ぜって―骸さんは倒せねーからな!!全員、顔見る前におっ死ぬびょーん!!」
「んだと!砂まくぞコラ!」
「甘いわハヤト」
『ビ、ビアンキ…』
ビアンキが手にしているのは中くらいの石。それをそのまま犬の頭上に落とす。
「キャンッ」
数秒後にはそんな声が聴こえてきた。穴を覗けはヒクヒクしている犬がいた。
「あれも死んだフリかしら」
「(やっぱこの人怖え―――!!)」
獄寺とツナは顔を青くした。
「だが奴の言う通り、六道骸を侮らねー方がいいぞ。奴は幾度となく、マフィアや警察によって絶体絶命の危機に陥ってるんだ。
だが、そのつど人を殺してそれをくぐりぬけてきたんだ。脱獄も死刑執行日の前日だったしな」
「この人何してきたの――!?」
ツナの持つ写真の中には六道骸本人ではなく、まったく別の人だという真実はカレンだけが知っている。
〜黒曜ランド内〜
「六道骸様」
黒曜ランド内のとある一室には、獄寺にやられて先ほどまで寝ていた千種がいた。体中包帯だらけだ。
「おや、目を覚ましましたか?3位狩りは大変だったようですね、千種」
「ボンゴレのボスと接触しました」
「そのようですね。彼ら、遊びに来てますよ。それに先ほど犬がやられました」
途端にベットから出ようとする千種。よほど犬の事が心配なのだろう。
いつも憎まれ口を叩かれているが、やはり長年つき添って来ているのだから。
「そう慌てないでください。我々の援軍も到着しましたから」
「…………」
骸の背後を覗き見る。
「相変わらず不愛想なやつね――久々に脱獄仲間に会ったっていうのに」
そこにいたのは計5人のかつての脱獄仲間。
「何しに来たの?」
「仕事に決まってんじゃない。骸ちゃんが一番、払いいんだもん」
見るからに金欲しさに来た女。
「答える必要はない………」
帽子を眼深にかぶり、表情をうかがえない長身の男。
「…………」
何もしゃべらず、表情も変えない気味悪い兄弟。
「スリルを欲してですよ」
肩に何匹か小鳥を乗せたこれまた気持ち悪いオジサン。
「千種は休んだ方がいい。ボンゴレの首は彼らに任せましょう」
ドサッ
突然何かが落ちる音がした。音の下方向を見れば、ランキングブックを拾うフゥ太と、黒髪の少女…山本桜がいた。
「クフフフフフフ」
後は骸の独特な笑い声が響くだけだった。