リングの光T 本
□標的24
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〜黒曜ランド内〜
室内に入ると、そこはちょうど雲雀さんが監禁されている部屋だった。
『雲雀さん、今の気持ちは?』
「早く主犯を咬み殺したくてうずうずしてるよ」
いつの間に仲良くなったのか、バーズの黄色い鳥が一匹肩に乗っている。
傍に携帯があることから並中の校歌を教えていたのだろう。
『ちょっと離れてて下さいねー。今、ここぶち壊しますから』
「キミ、そんなキャラだったっけ?」
『今さっき素を出したばっかりなんです』
壁の下に植物の芽があった。これは使える。
『緑龍―緑の息吹―』
芽に向かって小さく息を吐くと、その芽が急激に成長した。それは壁を伝い、やがて壁その物を破壊した。
『これでいい。でも雲雀さん、こっから出ないでくださいよ。後でいい獲物が来ますから』
「それは本当かい?」
『間違いないです』
「なら待ってるよ」
素直にも言う事を聞いてくれた雲雀さんに背中を向けて壊した壁から外に出た。
『(さて、フゥ太と山本の従妹はどこに居るんだか)』
このただっ広い施設を全て見て回るのは骨が折れる。そこで考えたのが風龍の力を使って見つけ出すこと。
微風を吹かせて小さな話し声を聞き取るのだ。まだマインドコントロールはされていないはずだから。
『風龍―微風―』
そのまま意識を集中させて耳を欹てる。すると、とある一室から小さな子供の話し声が聴こえた。
『…見ィつけた』
にやりと笑うと、その部屋に闇龍で姿を隠しながら向かった。
『ここか』
ご丁寧に監禁されている部屋にはきっちりと施錠されていた。しかも一つだけではない。幾つもの鍵が重なっている。
『…壊すか』
鍵を見つけるのも面倒臭い。手元に火龍の刀を作ると、気持ちいいほどにスパッと斬った。
ギイィィィ…
「だ、誰!?」
『君達を助けに来たよ。まずは…うん、傷を癒そうか』
だがどうしたものか。今、救急セットは持ち合わせてはない。
その時、またもや世界が反転した。
『…今、このタイミングで来る?』
《そんな事を言っている場合ではない。怪我を治したいのだろう?》
『そりゃ、ね』
目を開けた時、立っていたのは古ぼけた部屋ではなくどこかの病院かと思える部屋。
『まさかさぁ、…並盛病院に居た感じ?』
《そうだ。なのにお前が全く来ないから仕方なくこっちから出てきたやったのだ》
『そりゃすいませんでした』
まっさかそんな近場に居たなんてなー。って、こんなことしてる場合じゃないや。
『早く力、頂戴。向こうに戻らないと』
《だな》
その場で本契約をさっさと結ぶと、その世界から出た。
「…、…姉、カレン姉?」
『…大丈夫、今意識戻ったから。さて、怪我見せて?』
すぐに両手を出す二人。縛られていて所々切れているのが縄越しにも見えた。
『まずはこれを取り除かないと』
風で作った小刀で縄を切断する。露になった両手首に片手をかざす。そうすれば見る見るうちに怪我が消えていった。
「す、すごいよカレン姉!」
『そう?』
「ぁ、ありがとうござい、ます…」
『えーと、君が山本の従妹?』
「あ、はい。山本桜っていいます」
『うん、知ってる。山本から偶に聞くよ』
笑った笑顔が可愛い奴なんだって…
そう言えば嬉しそうに笑った。確かに彼女の笑顔は可愛かった。