リングの光T 本

□標的24
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『怪我も治し終わったし、此処から出てもらうよ』


「出られるの?」


『…やっぱり出たら危険だから、ここで待っててもらおうかな』



出たらまたあの変な趣味してる奴とか、骸に執着してる奴とかが居る。万が一意識が戻って襲われたら大変だ。



『大丈夫。僕の結界で守っておくから。その前にフゥ太は骸との契約を解かないとね』



契約印は?と聞けば、そでをまくって右腕を出す。そこには小さいながらも引っ掻かれたような傷があった。



『治すから。ねぇ、幻龍、いる?』



なんてね。呼んで出て来るほど甘くないかなぁ。



《呼んだか?》


『………呼んだけどさぁ…』


《契約の類はさっき紛れてやっていた。気付かなかったか?》


『…マジで?』


《マジで。さっさと解くぞ》


『うん』



いつの間に中に入っていたのか、頭の中に響く幻龍の声。この頃契約が疎かになってないかな?



『はぁ…』



息を吐いてフゥ太の傷に触れる。そうすると目の前に一本の藍色の糸が現れる。



『コレか…』



手に風龍の刀を持つと、そのまま糸を断ち切った。



『よし、解けた』


「本当だ…傷がなくなってる」



腕について居た傷跡も無くなった。これで骸のマインドコントロールは効かない。



『これで大丈夫。あとは…守龍―結界―』



見えない結界を張る。これで二人には僕が倒れない限り危害は加えられない、触れられない。



『いい?この結界が解けたら部屋の外で待っててね。でも、解けるときに鈴の音がしたら…すぐ外に出て。誰にも見つからないようにしてここから逃げるんだ』


「何で?」


『それは、僕が倒されたことを示してるから。力を維持できなくなったことを示してるからだよ』



笑いながら言う事ではないが、そうでもしておかないとまだ幼い二人には刺激が強すぎる話だ。



「…倒れないでね、カレン姉」


『大丈夫だって…』


「絶対に?」


『それはどうだかな…?ま、僕は行くところがあるから行くね』


「………うん」



不安そうな表情のフゥ太達を置いて、その部屋を出た。



『幻龍、僕の姿を消して』


《いいが…何のためだ?》


『幻龍ほどの力があれば、骸にも気付かれないで近づける』


《…はぁ、お前はまだ俺達の力を使いこなせていない》


『どういう事?』


《俺達の力を借りるだけじゃない。俺達の力を纏い、実体化するんだ》



幻龍の行っている事は少し難しい。纏う、実体化…訳が分からない。



《たとえば俺…“幻”を操る龍だと、その力は名の通り幻覚だ。それを頭の中でイメージしろ》


『イメージ…』


《そうすりゃ、勝手にお前に俺の力全てがいく。今、お前はオレの3分の1の力さえ出せていない》



そう言うと、幻龍の気配が遠ざかって行った。



『(多分、今僕の姿は見えていないはず。早く向かうか。一体どこまでいったか解らないけど)』



ドガアァンッ



『っ!雲雀さんと獄寺か…そうなるとかなり入って来てるな』



上の階を見上げる。そうしたって見えるわけではないが、何となくただ見上げる。



『ツナは…きっともう骸のとこに居るはず。なら早く行くしかない』



両手を握りしめ、足音を立てないよう気を配りながら走った。
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