リングの光T 本

□標的28
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『骸…』



倒された骸が、目を開けることはない。



「終わったな…」


「うん…って、なんでリボーンは渦の中に?それに皆の怪我!」


「怪我ならカレンがある程度治してくれたぞ」



渦の中にいる訳をリボーンは話さなかった。



「あ、ありがとうカレン」


『………いえ…』



ランチアの無事について説明されているツナの横をすり抜け、骸の傍に立つ。



『…馬鹿な事をしたな、骸』


「…」



話しかけても返事は来ない。



「死んでないよな?無事だよな?」


「ったく甘いな、お前は」



安心しきった様子の二人に、近づいていく二つの影。



「近づくんじゃねえびょん!マフィアが、骸さんにさわんな!!」


『(あの二人…)』



床を這いずってきたのは犬と千種。体の自由が利かないにもかかわらず、必死で骸のもとに来ようとしている。



「ひいっ、あいつらが!」


「ビビんなツナ。奴らはもう、歩く力すら残ってねーぞ」



僕に対してまるで射殺すような視線を向ける二人。



「なんで……何でそこまでして骸を…?君達は骸に利用されていたんだぞ?」


「解った風な口をきくな…」


「だいたい、これくらいなんでもないびょん。あの頃の苦しみに比べたら」


「あの頃………?」


「なにがあったんだ?言え」


「オレらは、自分のファミリーに、人体実験のモルモットにされてたんだよ」



返ってきた答えは残酷なもの。



「やはりそうか。お前たちは禁弾の憑依弾を作った、エストラーネオファミリーの人間だな」


「禁弾?それはてめーらの都合で付けたんだろーが。
おかげでおれらのファミリーは人でなしのレッテルを貼られ、他のマフィアからひっでー迫害を受けた。
それがファミリーの大人たちをが推し進めていた特殊兵器の開発に、拍車をかけたびょん」










朝か昼か、はたまた夜かもわからぬ実験室では、毎度のように子供たちが実験により消されていく。
目の前で一つの命が消えていくのを、ただただ見つめていることしかできない。



「この調合でも駄目だな」


「火薬の量が多すぎたのかも」


「特殊兵器の開発は、地に落ちたオレ達が再び栄光を取り戻すための礎だ。
開発に携わり、死ぬことは、栄誉なことだと思え」



そういってまた一人の子供の手をとり、実験台へと導く。
逃げる術など、なかった。



「ウルフチャンネル、読み込み開始」


「ギャアアアア!」


「実用化には程遠いな」


「うわああああ!」



犬と千種、骸も、例外ではなかった。
でも、彼―骸は―――



「コラ!何をする!!」


「やめろ!うわ――ッ」



辺りに響き渡るのは、今まで自分達を苦しめ続けてきた大人たちの声。
飛んでくるのは、その大人達の血飛沫―――


たった一人で現状をぶっ壊した


彼―骸―から差しのべられた手


それを振り払おうとは


微塵も思ってはいなかった


初めて、自分の居場所ができた


帰る場所が、出来たのだ――
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