リングの光T 本
□標的33
1ページ/3ページ
「んな"ぁ〜〜〜〜!?ここどこ―――!?」
ツナが崖の中腹でそんなことを叫んでいる声が聞こえてくる。
『相変わらずのスパルタだな…』
「じゃなきゃ、ヴァリアーに殺されるだろ?」
『解ってますって』
あの後、僕はリボーンと別れ、家光さんと合流した。
『あれが本当に、初代ボンゴレボスが行った修業なんですか?』
「ああ、そうだ」
『(嘘臭い…)』
目の前では、死ぬ気になって崖を登ろうとするツナ。いや、もう解けて落ちたが。
「アイツ、ツナにあの技をマスターさせるつもりだな」
『ああ、零地点突破ですか。初代が習得するのに半年かかったという技』
「確かにそうだが…なぜ知っている?」
『(ヤバッ、家光さんにはまだ言ってなかったんだっけ…たぶん)いや、文献で見まして』
「アレが載ってる文献なんてあったのか?」
『あ、いや、イタリアに帰った時、ドゥラドファミリーの金庫室にあったんですよ』
出まかせを言ってみれば、何とか信じてもらえた。
「さて、並中に行くぞ!」
『…どうやって?』
「そりゃ勿論……お前で」
『言うと思いましたよ…』
ハァ…、とため息をつくと、一瞬にして背中から藍色の翼が生える。
「やはり、天地の守護者にして正解だったな…」
『何してんですか、置いて行きますよ』
「お、わりィわりィ!」
流石に大の大人を背中に乗せるのは無理なので、両手をつないで宙釣りにして行く。もちろん、姿が見えるなんてヘマはしていない。
〜並中〜
『……着きましたよ…』
並中の屋上。そこで雲雀さんとディーノさんが戦っていた。二人に気付かれないよう、物陰にそっと降りる。
「お前はまだ、井の中の蛙だ。こんなレベルで満足してもらっちゃ困る」
「……」
「もっと強くなってもらうぜ、恭弥」
「やだ」
「なっ!…(バキッ)…って!てめーなぁ!」
ちょうど説得している場面に立ち会った。
『さすがディーノさん。雲雀さんのトンファーの直撃を避けるとは』
「フフ…それでいい。お前たちはどんどん戦え。よし、次行くぞ」
『早っ!』
「次は山本武だ」
『はいはい…』
藍色の翼を広げ、家光さんの手を掴むと、一瞬にして2人は姿を消した。
〜道場〜
『……着きました。まさかこんな山奥にあるとは…』
「しっ!静かにしてろ。こちらの存在に気付かれては困る」
『…家光さんの方が煩いですよ』
翼をたたみ、“あさり組”と書かれた提灯のついた道場の窓による。
「ごっこじゃねぇんだぁ!!!」
『うおっ!?』
窓に寄った途端、聞こえてきた怒声。思わず驚き、窓から一歩遠ざかる。
「ん?ビビったのか?」
『…驚いただけですよ』
窓から中をのぞけば、防具を付けていない山本父が、防具を付けている山本を竹刀ではっ倒していた。
『すごい気迫…』
「山本武…お前の剣に一番足らないのは、そのすさまじき気迫よ」
『雲雀さんのところで思ったんですけど、その最後の一言、いらなくないですか?』
「……次行くぞ、次」
『(スルーした…)』
早くしろと言わんばかりに睨んでくるので、仕方なく指定された場所へと連れて行くことにした。
〜谷〜
『…本当にここでいいんですか?』
「間違いない。笹川了平とコロネロはここで修業をしている」
『そう言っておいて、もう30分は探しまわってますよ』
「………」
ここに着いてから早30分。一向に2人の姿はおろか、人の気配さえしない。
『しょうがない…』
その場で止まると、微妙な風を送り始める。
「何をしている?」
『…………見つけた』
家光さんの質問には答えず、人の気配を感じ取った方へと急ぐ。
『……居た…』
近くの岩に家光さんを下し、2人を観察する。…寝ている?
「“晴のリング”にふさわしい資質に気付くとは、さすがアルコバレーノ…。奴が開花すれば大きな戦力になる」
『……』
「さて、最後行くぞ」
家光さんが言った“戦力”。少し引っ掛かったが、無視して飛び去った。