リングの光T 本
□標的38
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獄寺とベルフェゴールのバトルが終わり、家へと帰って来たカレン。今彼女の頭の中を占めているのは“どうやって獄寺を治療するのか”だ。
『さて、どーするか』
《そのまま放置しておきゃいいだろ。どーせオッサンが手当てするんだろ》
『ロマーリオさんね』
オッサン言うな。っていうか、さっさと戻れよ闇龍。
『でも、アレは治療とは言えないからなぁ…』
《どんな治療なんだ?》
『包帯大雑把に巻き付けるだけ。ミイラ化するよ』
《……治療じゃねぇな》
『だろ』
悩んでも仕方がないのだが……
『よし、決めた』
《どうするんだ?》
『ロマーリオさんに任せる』
《包帯巻き付けるだけでいいのか?》
『大丈夫だろ。どうせ死にそうなほどのお怪我じゃないし、ピンピンしてたし。見た目は』
《見た目で判断していいのかよ…》
『今回は特別』
男の治療というヤツはロマーリオさんに任せるということにした。ごめん、獄寺。
『寝る』
《はいはい》
『…戻んないの?』
《護衛だ、護衛。お前も一応狙われてるからな》
『一応って何だよ』
《一応は一応だ》
『……そ』
ベットに横になると、すぐさま睡魔が襲ってきた。カレンは遅い来る睡魔に身を任せた…
〜翌日〜
『…何で起こしてくんないんだよ!』
《俺も寝てた》
『護衛の意味ない!』
ただ今の時刻、午後11時20分。
そう。20分。
『もう始まってるじゃねぇかよ!』
《…(キレたか)》
『飛ばせぇえ!』
《うっさ…》
口調がスクアーロになりかけてきている。
《着いた…》
『闇龍、姿消して!雲雀さん居るから』
タンクの上に座っているのは雲雀さん。見つかったらややこしいのですぐさま姿を消す。
《…やられてるな》
フィールド上空に移動し、中を覗く。そこには、肩から血を流している山本が居た。
『これまた、大きな怪我で…』
《感心してる場合じゃねぇだろ》
そうこうしているうちに追い詰められていく山本。肩の次に右目、そして体中に傷をおっていく。
それでもなお、山本は諦めない。体中から血を滴らせながらも、立ち上がる。
《あの小僧のどこに、あんな力があるんだか…一般人ならもう気絶してもいい頃だぞ》
『山本はある意味負けず嫌いだからね』
時雨蒼燕流は、完全無欠、最強無敵だからな。そう言う山本は、笑っていた。
『時雨蒼燕流は滅びの剣』
《滅びの剣?最強を謳っているのにか?》
『たった一度きりの継承。それに、最強を謳っているからには、狙われる危険だってある』
《…どっかで滅んでも仕方ねぇ剣ってわけか》
『そういうこと』
山本のお父さんの作った“八の型篠突く雨”は打った。一度打ってしまえば、スクアーロには全て動きを読まれてしまう。
『新しい型でも作らないと、勝つことは難しいだろうよ』
《土壇場で出来るモノか?》
『逆。土壇場だからこそ、作れるんだよ』
だって、山本はもう作ったみたいだし。
確かに、フィールドに佇む山本は、今までの型の構えとは全く異なる構え方をしていた。その構えはまるで、バッターボックスに立つ打者。
『野球バカなだけはあるよ』
突っ込んでくるスクアーロをかわす。しかし、スクアーロはものすごい反応速度で方向転換をした後、山本に一撃入れる。
《終わったか》
『黙って見てろって』
吹っ飛んだ山本にとどめをさそうとスクアーロが向かった瞬間、背後に山本が。
《おお》
『…黙ってろ』
しかし、剣帝との戦いで左腕を斬り落としているスクアーロは、義手となった左腕だけを背後に居る山本の腹に突き刺す。
だが、それは水。水面に映った影。本物は、スクアーロの真横から新たな型を放った。
“攻式九の型 うつし雨”
それが、山本が作った型の名前。そのあと、リングを完成させた山本はモニターに向かって満面の笑みを浮かべた。
『水龍』
《はい?》
《水龍も使うのか?》
『うん。今回は水のフィールド。水龍の力は必要不可欠だ』
勝負の決着がついた途端、カレンは傍に水龍を呼んだ。下では、ザンザスがスクアーロを嘲笑っていた。
《何?あの男…カレンさん、殺ってきてもいい?》
『ダメだって』
物騒なことを満面の笑みを浮かべた水龍が聞いてくる。そのあと、小さな舌打ちが聞こえたのは、気のせいということにしておこう。