リングの光T 本

□標的7
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「チーム分けは終わったか?」


「あと一人です」



ある日の体育の時間。この日の体育の授業は野球だった。いつものように、ツナはどこのチームにも入れてもらえず、二つのチームの間に立っていた。
どうやらどちらも“ダメツナ”は入れたくないようらしい。

ちなみに僕は山本のいるチームに居ます!嬉しいですね。レギュラーキャラと一緒っていうのは!
でもツナを仲間外れにするのは何か許せません。僕は原作の事を忘れ、口を開いていた。しかも…



「『いいんじゃねーの/ないんですか?こっちに入れば』」



…山本武とかぶりました。まあ、こんな事を言ってから原作の事を思い出すんですよ。
ツナを入れよう発言をした僕たちの周りには反感を持つ生徒が集まってくる。
それを山本は軽くあしらい、“オレが打たせなきゃいーんだろ?”とか言ってる。



「山本がそう言うんなら」



そう言い集まってきた生徒は離れて行った。そうして授業が始まった。



カキーーーン



ボールが飛んでいくいい音がする。もちろん山本が打ったボールだが。
しかし山本が打った後、彼の顔を見てみるとなぜか苦虫をかみつぶしたような顔をしていた。



『(きっと、飛びが良くなかったんでしょう…それより次僕の番じゃないですか!!)』



そんな思いのままバッターボックスに立つ。ピッチャーを見れば、野球部の一年でかなりいい球を投げるという噂の男子だった。



カキーーーン



『(案外飛んだなぁ…)』



思いのほか球は良く飛び、学校の裏山に入り場外ホームランとなった。



『(滅茶苦茶に振っただけだったんですけど…)』



もしかして母さんとの修行で体力とか付いてる!?

…それになぜか女子の方からキャーキャー騒がれてるんですが…僕何かしましたか?










ホームベースまで戻ると男子達に囲まれた。その中で軽く笑っていると、山本がこっちに来た。



「なぁ、月城だっけか?お前野球してたのか?てか野球部入らねーか?」



にこにこと笑いながら来る。しかしその顔は本当に笑っていなかった。
きっと心の中ではなぜ素人のくせにあんなに打てるのか?などと思っているのか。



『部に入る気はないんです…すみませんが入部はお断りさせていただきます』


「…そっか!わりーないきなり!」


『いえ。山本君こそすごいじゃないですか。一年の中で先輩達を差し置いてレギュラーでしょう?』


「そーいう訳でもねーんだよな…」



ボソッと何かつぶやいたようだが、周りの声が煩く、聞き取ることが出来なかった。
気になったが、チームメイトに呼ばれて授業に戻った。









授業は終わった…当然僕たちのチームは負け。責任はツナ一人のせいだ!とチームの皆は言い張り、コートのトンボがけはツナに押しつけられた。
見ていられなかった僕は、その場に残っていた。ツナは不思議そうにこちらを見てくる。



「優?帰らないの?」


『…僕もトンボがけ、やりますよ』


「ええっで、でも…」


『僕以外にも、もう一人いますよ。ね?山本君』


「助っ人とーじょーっ。ハハ、優は気付いてたのな!」


「山本!?」



そのまま話しながら三人でトンボがけをしていた。トンボがけが終わったのは、あたりが暗くなってからだった。



「じゃあ、手伝ってくれてありがと!ちょっと用事あるから先帰るね!また明日!」


『はい、また明日』


「おう、また明日な〜!」



ツナは先に帰って行った。きっとリボーンのスパルタ勉強が待っているのだろう。その顔は帰りたくなさそうだった。



『それじゃあ僕たちも帰りましょうか』


「そーだな!」



僕たちも置いてあったカバンをとり、道具を片付けて帰り道を急いだ。



『そう言えば山本君、野球での調子が不調なのですよね?』


「ああ…ツナに言ってたのが聞こえてたかもしれねーけど何度打っても打率落ちっぱなし、守備乱れっぱなし…どうしようもないんだ」


『たまには気持ちを落ち着かせて練習の休みの日を作ったりする事ですよ。何事にも休憩は必要ですし、調子が良くないときも誰にだってあります。
あまり気を詰めすぎないで、リラックスするのも大切なんです。

…一人で全て抱えてはいけません。周りには僕達もいるんですから、ね?』



立ち止まって、僕が言えるだけのアドバイスをする。僕は野球をやっているわけでも、やっていたわけでもない。でも、気持ちを和らげる方法なんかは言える。
言えるだけの事は言った。この後どうするかは山本君次第だ。



「ははっ優にはオレの心が見えてるみてーだな。そうだな!それに俺の事は呼び捨てでかまわねーぜ」


『そうですか。山本、あまり僕が言える事ではありませんが、本当に一人で抱えないでくださいね?』


「ああ、ありがとな!そんじゃあ、オレこっちだから。じゃあな!今度オレん家来いよな!寿司、おごるぜ!」


『はい、ぜひ伺わせていただきます。それではまた明日』



そうして山本とは別れた。まさか、あれほど言ったのに、一人で抱え込んでいたとは知らず…
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