リングの光T 本
□標的7
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次の日、学校に来てみると教室な誰もいなかった。
嫌な予感がして、まさかね…と思いながら屋上に行ってみると、そのまさかだった。
山本がフェンスの向こう側に居て、飛び降りようとしている。その右腕は痛々しく包帯が巻かれていた。
山本は皆の必死の説得にも応じず、今にも飛び降りてしまいそうだった。
『(ツナはまだなのですか!)』
早く早くと焦っていた。きっと今僕が言っても彼を止める事が出来ない。
ツナが行かなければ…ツナが行かなければ?
『(僕は、無意識のうちにツナに押しつけている?…僕自身が何もやらずにここに突っ立っているなんてできません。僕も、行かなければ)』
僕も前に向かって歩き出す。人込みをかき分け僕が前に出るのと、ツナが人ごみに押し出されて出て来るのは同時だった。
「止めに来たなら無駄だぜ。おまえ、ツナならオレの気持ちが分かるはずだ。
ダメツナって呼ばれているお前なら、何やってもうまくいかなくて死んじまったほーがましだって気持ち分かるだろ?」
「えっあの…いや…山本とオレは違うから…」
その途端、山本の纏っている空気が重くなった。
ツナにそう言われたのがむかついたのだろうか。彼の顔が黒くなった。
「さすが最近活躍めざましいツナ様だぜ。オレとはちがって優等生ってわけだ」
「ち、ちがうんだ!!ダメなやつだからだよ!!
オレ、山本みたいに何かに一生懸命撃ち込んだことないんだ…「努力」とか調子のいい事言ったけど本当は何もしてないんだ…
…昨日のはウソだったんだ…ごめん!!」
昨日トンボがけをしていた間に言っていた事を訂正し、頭を下げて山本に謝る。
山本はそれを黙って聞いている。心境は分からないが、口を出すつもりは無いらしい。
「だから俺は山本と違って、死ぬほど悔しいとか挫折して死にたいとか…
そんなすごい事思った事無くて…むしろ死ぬときになって後悔しちまうような情けない奴なんだ…………
どーせ死ぬんだったら死ぬ気になってやっておけばよかったって、こんなことで死ぬのもったいないなって…………
だからお前の気持ちはわからない…ごめん…じゃ!!」
突然こちらを向き、フェンスから離れるように走ってくる。
『待って、ツナ!こっちに来ては…』
「まてよツナ」
「!?」
忠告しようとしたつもりが間に合わず、ツナはこけてしまった。
つまり、こけたツナの体はフェンスの方に倒れるわけで…
『ツナ!山本!!』
ツナと山本は屋上から落っこちて行った。慌てて辺りを見回しリボーンを探す。
すると、なぜか隣にリボーンがいた。
『(なぜリボーンがここに?これではツナに死ぬ気弾を打つ事が…)』
優はリボーンに「なぜ行かないのですか?」と尋ねる。
返ってきた返事は思いもよらない返事だった。
「オレは行かない。おまえが行け」
『な!?貴方それでもボンゴレボスの家庭教師ですか!?』
「お前がボンゴレに相応しいかの入試テストだ。早くしねーとあいつら、死ぬぞ」
その言葉を聞き、僕はフェンスに向かって走った。
そして走りながら風龍に暴風を吹かせ、野次馬の目を瞑らせる。その間に僕は屋上から飛び降りた。
『(く、間に合わない!それなら…)』
間に合わない事を悟り、僕は背中に風龍の翼を作りそれをはばたかせ、二人に追い付く。
二人の手を握ると、目をつぶっていた二人が目を開いた。そのまま瞑っていてくれた方が良かったが、今はそんな事を考えている暇はない。
「な、優…なのかな。何でここに!死ぬかもs『煩い!!黙ってろ!!』」
はじめてどなった。その事で二人は驚いたようだ。
『くっ、がぁああ!!!』
力を一気に使った事と、二人分の体重を支えている事で体中に痛みが走る。その痛みに耐え、力いっぱい翼を動かす。そうして何とか地面への激突を防いだ。
二人をそっと地面に下ろす。その途端僕は地面に四つん這いになってしまった。
『が、はぁ…はぁ…はぁ…』
「ホントに、優か?」
どうやら背中に生えている翼のせいで、僕だか分からないようだ。山本がおずおずと尋ねてくる。
『はぁ、はぁ、はぁ』
僕はどうするか考えた。
『(今は教えない方がいい。またきっとこの力を使う時が来る。その時に正体がばれていてはいけない)』
僕は、そのまま力を振り絞ってその場から飛び去った。後ろから二人の呼び声が聞こえるが、無視だ。
行先は…学校の裏山。行くには応接室の前を通る事になるが、雲雀がいない事を願う。
応接室前、飛び去るとき横を向いて中を確認してみると、居た…雲雀がいた。しかも目が合ってしまった。
『(ヤバいですね…目が合うとは。人間が空を飛ぶなんて信じられませんからね…しかも翼が生えてると来た。
きっと彼の事だから追ってくるかもしれません。急いで逃げなくては!)』
先ほどよりスピードを上げ、裏山に突っ込むようにして飛び込んだ。そのせいで体に新しい傷が増えた。
雲雀がいくら待っても来ないところをみると早さについていけず、追いつけなかったのだろう。
それを確認すると体が悲鳴を上げ始めた。
『何だか…眠く…』
力の出し過ぎだからだろうか。突然眠気が襲ってきた。翼をしまう事も忘れ、その眠気に身をゆだねた。
眠りに落ちる間際、黒い何かが視界の端を横切った気がしたが、確かめることも無く眠りに落ちた。
「ふーん。面白い草食動物を見つけたね…」