リングの光T 本
□標的9
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「その赤ちゃんは平日毎日うちの塀を歩くんです」
『そうなんですか。それで?』
「名前はリボーンちゃんって言うんです。なんて可愛い名前なんでしょう!」
『…そ、それでどうしたいんですか?ハル』
「ギュウウウウウって抱きしめたいんです!!」
『…ひと先ずその口から垂れているジュースを拭きましょうか』
「はひ!?そうですね」
今はハルと街中のカフェにいる。
そう、あの三浦ハルだ。
なぜカフェでお茶するほどに仲が良いかというと、ある日彼女が町中で買い物袋をひったくられた。
その時僕の荷物も盗られ怒りに任せて僕がそのひったくり犯を蹴り飛ばした時、彼女にいわゆる【一目惚れ】されたのだ。
「それで明日、リボーンちゃんに告白しようと思うんです!!なので優さんも一緒に来て下さい!!」
『…どうしてもですか?』
「どうしてもです!!!」
『…ハァ、分かりましたよ。一緒に行けばよろしいんでしょう?』
「それでは明日、ハルの家の前に来て下さい!」
『分かりましたよ』
「それじゃあまた明日です!」
『はい、また明日』
カフェを出て、ハルと別れた。カフェは明日つき合ってくれるから、とハルがおごってくれた。ラッキーです。
―次の日―
『それでは行きますか』
約束の時間が近づき、家を出るとちょうど学校に行く途中のツナたちに会った。もちろんリボーンも一緒だ。ちょうど良いので一緒に行こう。
「ヨッ、ホァッ」
向こうの方からおかしな声が聞こえてくる。きっとハルの声だ。
その声が近づいてくるにつれ、塀の上に器用に上っているハルが見えてくる。ツナは変な人を見る目で見ていた。
…あながち間違ってはいない。今のところは。
「こんにちは―――っ!あっ優さんもこんにちは」
「ちゃおっス!」
『はい、こんにちは』
こんな状況でも挨拶は忘れない。ツナは何で僕が知りあいなの!?というような視線を送ってくる。
…今は流しておこう。
「私…三浦ハルと申します」
「知ってるぞ。ここんちの奴だろ?」
「お友達になってくれませんか?」
よほど知っていてくれた事が嬉しいのだろう。目の下が赤く染まっている。
「いいぞ」
「はひ―――っ」
「あっおい!」
『ちょ、ハル!?』
くらり、と体が傾き、倒れる。さすがにこれには焦ったが、器用に着地し一人でものすごく喜んでいる。
「あ…あの…さっそくなんですが…こう…ギュ…っってさせてもらえませんか?」
「気安くさわるな。オレは殺し屋だからな」
「こらリボーン、白昼堂々そーゆーことを…」
パァンッ
辺りに乾いた音が響く。と同時にツナの頬が赤く染まる。ツナは何が何だか分かっていないようだ。
ツナの頬を叩いたのはもちろんハル。その眼にはほのかに涙がたまっている。
「最っ低です!!なんてこと教えてるんですか!?赤ちゃんはまっ白なハートを持った天使なんですよ!!
あなたはそんないたいけな純情を腐ったハートでデストロイですか!?」
「ちがうって…なんか誤解してるよ!!」
ツナが必死に誤解を解こうとしてもなかなか解けない。それを見ていてなんだか痛々しく思えたカレンはリボーンに話しかける。
『リボーン、誤解を解いてあげられるのはあなただけですよ?貴方の生徒なのですから助けてあげたらどうですか?』
「は、おもしれーからこのまま行くぞ。それにボスになるのにはいろいろな試練を乗り越えなきゃな」
『貴方はドSですね…それにボスになるのにこんな試練はいりませんよ…』
こそこそと話していると、ハルがずかずか近づいてきた。その後ろには般若が居るようでマフィアだが少しビビった。…彼女マフィアになれるのでは?
「優さんもそう思いません!?マフィアなんて物騒な事に巻き込むなんて…デストロイです!!」
『あ、いや、そのですね…』
「もう!!それではリボーンちゃん、優さん、またね!」
「ちゃおちゃお」
『はい…また今度…(ツナ…ドンマイです)』
「ちょっ、あのねー」
「(ぐおおおおっ!)」
「(なんか恨まれてる―――)」
こうしてハルは去って行った。その後、僕たちも学校に行ったがハルの事が頭から離れず、僕は上の空だった。しまいに京子から
「どうしたの優君。…もしかして新しい男か女が出来たの?(黒笑)」
『いや、女ならまだしも僕は男ですよ(汗)』
とまで言われた。僕が女だとはばれていないはずなので、一瞬だがどきっとした。…なんか京子原作とは違う性格になってませんか?
…なんとか無事に授業は終わり
放課後になり、またたく間に夜になった。
その日はいい感じの暗闇に満月だったため、闇龍を探しに外に出ていた。屋根伝いに近所を回っていると、ツナの家の門の前に人影があるのに気がついた。
『(?誰でしょうか。もしやハル!?こんな夜遅くに危ないじゃないですか!!)』
そんな心配もよそに黒い頭巾のようなものを頭にかぶり、ツナの家の前にずっと佇んでいるハル。傍から見れば不審者にも見えなくはない。
何かつぶやいているようだがここからは聞く事が出来ない。そのとき、暗闇の向こうから誰かが歩いてくるのが見えた。
『(あれは、酒瓶?となるとシャマル?あいつは危ないな…もしものことを考えておきますか)』
片手に風の塊を用意しておきながら、その近づいてくる人物に少しずつ近づいていく。
ツナの家に近づくにつれて部屋の明かりで洋服や顔などが見えてくる。
『(あ、ビアンキでしたか)』
それは…ビアンキだった。門の影に隠れていたハルを見つけると、ハルを引きずりながらどこかに去って行った。
ここからでは何を話していたかは分からないが、まぁ大丈夫だろう。そう判断したカレンはその場から立ち去った。