リングの光T 本
□標的10
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話は飛び、夏休み(悪魔の補習授業)が過ぎ今日から二学期が始まろうとしていた。ツナはといえばその初日から遅刻しようとしている。いつも通りの日常がやって来た。
「はーーーーあ、始業式からねぼーだよ。こりゃーどー急いでも遅刻だな」
「やってみなきゃわかんねーだろ?」
その声が聞こえてきただけでツナの顔は蒼くなっていく。
「げっおまえ!ちょっタンマ!!」
制止をかけたにもかかわらず、声の主であるリボーンはそれに従う事も無く、ツナに向けて銃を発射した。
ズガン、と銃声が辺りに響き渡る。…それにもかかわらず誰も出てこないというのは、ここは普通の町ではないのだろうか?
「うおおおお!!!死ぬ気で登校するー!!!」
額にオレンジの炎をともしたツナはパンツ姿で学校への道を全速力で走っていく。その速さならオリンピックも夢ではないかもしれない。
走り始めて五分と経たないうちに学校に到着。死ぬ気タイムはまだ終わらず、校門に入ってもいまだに走り続けている。
「うおおおおお!!!!」
「まちな」
そんなツナに声をかける者がいた。物凄い速さで走るツナの右腕をつかむ。しかし、死ぬ気のツナがそんなことで止まる訳もなく、手もつかんだ主、笹川了平とともに校舎裏へと消えて行った。
「くっそーリボーンの奴〜〜〜間に合いはしたけどまた恥かいたよ」
額の炎も消え、いつものツナに戻る。その時右腕につかまっていた笹川了平が声を出した。
「まぎれもない本物…」
声を聞いた瞬間、またもやツナの顔は青くなっていく。腕につかまっていた男は何回か前転した後こちらを向いた。
「聞きしに勝るパワー・スタミナ!そして熱さ!!やはりおまえは百年に一人の逸材だ!!」
「は?」
ツナはもはや何を言っているのか分かっていない様子だ。顔を青くさせたままわけのわからない表情をしている。
「我が部に入れ!沢田ツナ!!」
「え、なっ何でおれの名前…!(ていうかツナってあだ名ー!!)」
「お前のハッスルぶりは妹から聞いているからな」
「お兄ちゃーん」
まさかのそこへ京子の登場。ツナはなぜ京子がここにいるのか分かっていないようだ。しかもその隣には優もいる。
理由は校門付近で京子と会い一緒に教室へ行こうとしていたところ、京子の兄、了平が目の前でカバンを置いてさらわれていったのだ。
それでカバンを持って二人を追いかけたところ、ここに辿り着いたという訳だ。
「あ、ツナ君おはよ!」
『おはようございますツナ、笹川先輩』
「おお、おはよう!!」
「え?は?」
「!あ、まさかおにーちゃんツナ君つかまえてメーワクかけてないでしょーね!」
「ない!」
すっぱりきっぱりと言い放つ目の前の青年。漫画で見るよりなんだかオーラが燃えている。まさに「極限」という言葉が合う。
「ツナ君、お兄ちゃんのボクシング談義なんか聞き流していいからね」
「ボクシング…?」
「そう言えば自己紹介がまだだったな。オレはボクシング部主将笹川了平だ!!座右の銘は¨極限¨!!」
「(あ、熱い…!!!)」
『(やはり極限…それに熱い…)』
「お前を部に歓迎するぞ沢田ツナ!!」
「え?あの…」
ツナの肩に手をのせ(それもガシッと音が鳴るほど)部に勧誘する了平。部に入ることを強く望んでいるようだが、ツナにそんな気がある訳がない。
「ダメよお兄ちゃん。ツナ君をムリヤリ誘っちゃ―――」
「ムリヤリではない!!だろ………?沢田」
「えっ」
どう見てもムリヤリなのにもかかわらず、本人はそう感じていない様子。しかもツナにその意見を押しつけようとしている…
いや、ただの天然か、極度のおバカさん(了平ファンの皆さんごめんなさい)なだけかもしれない。
「では放課後にジムで待つ!」
「あ、ちょっ、やっぱりオレ…」
黙っていたのを訂正だど勘違いしそのまま去っていく了平。しかもそのツナに対してさらなる追い打ち。
「ガサツでしょ?あー見えても意外とやさしいところもあるんだよ。でもツナ君すごいな。私も嬉しくなっちゃった」
「え?」
「あんな嬉しそーなお兄ちゃん久しぶりに見たもん」
「(断りにくくなってきた―――!!!)」
『…ツナ、僕も一緒に行きますよ。放課後』
「ホント?ありがと…助かるよ…」
その顔にはあきらめの色がでていた。その表情に僕は苦笑いでしか返せなかった。
―放課後―
「(やっぱり無理だよ…ボクシングなんて)」
『ツナ…大丈夫ですか?顔色が良くないです』
約束の放課後、ボクシング部の部室の前にはツナと付き添いで来た優の姿があった。昼休み中に了平の教室に行き断ろうと試みた。
が、あいにく当の本人は昼間っから部室に行っており、断る機会をなくしたツナは渋々この場に来ていた。