リングの光T 本

□標的10
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部室の前でうろうろしていると突然ドアが開いた。開けたのは了平。



「おお沢田、待ってたぞ!」


「わっ」


「お前の評判を聞きつけてタイからムエタイの長老まで駆けつけているぞ」


「は?タイの長老…?」



よく見ればボクシングのコートにある棒の上には小さな人影が見える。



「パオパオ老師だ」


「パオ―――ン!」


『(どう見てもリボーンですね。なぜ他の人は気付かないのでしょうか…不思議でなりません)』


「オレは新入部員と主将のガチンコ勝負が見たいぞ」


「んな!何言ってんだよ!お前オレにボクシングやらす気か!?」



優は少し後ろに下がった。これから二人の勝負が始まるのであれば、ここにいるより後ろにいた方が安全なのは間違いないからだ。
(それこそ銃弾何かが飛んでくるため)
後ろに行けばいつの間に入ってきていたのか獄寺、山本、京子の三人が居た。



『おや、皆さんも観戦に?』


「ああ、10代目の活躍は見逃せないからな!」


「ツナが先輩と戦うって言うからな〜。ツナ負けんなよ〜!」


「あそこにいる赤ちゃんに連れられてきたんだよね!そうだ!どうせなら優君もやってみたら?ボクシング」


『いえ、遠慮しときます…先輩には勝てそうもないので』



止めてくれ京子。そんな事リボーンに聞かれたらたまったもんじゃない。絶対お前もやれとか言ってくる。
それだけは何としてでも遠慮したい。



「ゆくぞ沢田ツナ!!加減などせんからな!!」


「ファイトー」


「ツナーーー」


「10代目ーーー!!」


「(オレ何やってんだ―――!?)」



一人後悔している中、言うまでも無く試合は開始される。



カーン



開始早々了平の右ストレートがツナの顔面に撃ちこまれる。ツナはいとも簡単に倒れ込んだ。了平はそれを手加減していると勘違いしているようだ。



「油断するな沢田!!」


『(なんか違和感…紙一重で避けた…!?)』



1人だげ違和感を感じている中、ツナの視界に飛び込んできたのは愛銃を構えるリボーン。ツナの頭の中に最悪の方程式が浮かぶ。
とっさに自分の額を両腕で隠した。そんなツナを置いてリボーンが次に狙ったのはまさかの了平。



「ならこうだ」


『(ああ、先輩に死ぬ気弾が…。ツナ、ご愁傷様です…)』



額を打ちぬかれた了平は重力に従って崩れ落ちる。それも倒れているツナの真横に。
いきなり倒れてきた了平に頭が付いていってないない様子だ。



「ええ゛ーーーー!!お兄さんに死ぬ気だ撃ったのーーーー!!?」


『(それにしてもツナは良く顔を青くさせますね…)』



額から血を流す了平を見てようやく撃たれたのだと理解する。と、同時にさらに顔を青くさせた。



「どーしたんだろお兄ちゃん。いきなり倒れるなんて」


「どーせコケたんだろ」


「そうなのかー?オレには何かに押されたかなんかされたのかと思ったぜ?」


『(ほぼあってますよ山本。でも、あなた達にはリボーンの撃った弾は見えないのでしょうけれでも)』



そうこうしているうちにツナも撃たれ、二人とも死ぬ気になった。…いや、訂正しよう。死ぬ気になったのはツナだけだ。常時死ぬ気男なあの男は撃っても何ら変わりはない。



「死ぬ気でボクシング部入部を断る!!!」



そう叫んだツナを不思議そうな顔で見つめる獄寺、山本、京子の三人。死ぬ気になった事を分かっていないのだから仕方がない。
一度リボーンを見やると、リボーンもこちらを見ていて目があった途端ニヤリ、と含み笑いをされた。



『(絶対何かたくらんでますね…!)』



こちらも負け時にほんの少し殺気が入り混じった視線を送るとリングの方に目を戻した。リボーンが、少し目を見開いてこちらを見ているとも知らずに…



「(殺気をオレ以外に当たらないように気を配ってあてるなんてな…やっぱり調べとくか。あいつの素性を)」



リングでは了平の極限ラッシュが繰り出されているところだった。



「かわすツナもすげーが、あのラッシュも常人のもんじゃねーな…」


「ありゃ殺し屋のそれだ…」


「入れ入れ入れ入れ!!」


「やだやだやだやだ!!」



いとも簡単に極限ラッシュをかわしていくツナ。普段のツナとはかけ離れている。



『(死ぬ気ツナもいいですが、僕自身の好みとしては超死ぬ気ツナの方がいいですかね…
って、なんてこと考えてるんでしょうか僕は!!)』



変態チックなことを無意識のうちに考えていた自分に軽く気味が悪くなる。まあ、前世ではそれなりにリボーンの世界にはまっていたが…



「断る!!!」


「ぐはあぁ!!」


『!』



ツナの大声で現実に引き戻される。
殴られた了平は勢い余ってリングの外に飛び出し、窓ガラスに当たってその場に落ちた。
その途端にツナの死ぬ気モードが解ける。同時に了平の死ぬ気モードも解ける。

はっとして了平を見やると、そこには額から血を垂れ流しにしている了平の姿があった。その傍には京子もいる。
血を流しているのもかかわらず、その顔は歓喜に満ち溢れていた。



「お前のボクシングセンスはプラチナムだ!!必ずむかえに行くからな!」


「もーお兄ちゃん嬉しそうな顔してー!」


「(なに―――!!?むしろすかれた―!)」


『(血流してる姿見て嬉しそうって…この兄妹、どっか抜けてますか?)』



そしてもう一人スカウトする者が。



「オレも気に入ったぞ笹川了平。おまえ、ファミリーにはいらねーか」


「コ、コラー!逆スカウトすんなよーー!!」


『相変わらず貪欲ですね…』ボソッ


「何か言ったか優」


『いえ、別に何でもないですよ』
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