魔の預言者 本
□第一話
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……正十字学園町のとある一軒家。
そこには様々な者たちから欲される、一人の少女が住んでいる。
悪魔と人との間に生まれた稀な子供。
名を…如月海。
彼女がこの世界に来たのは今から10年前…。
その時の彼女が中学2年の時のことだった。
いつも通り学校に通い家に帰る途中だった彼女の目の前が突如真っ暗になり、意識が飛んだ。
…それからどのぐらいたっただろうか。気付くと目の前には血だらけの部屋が見えた。部屋中に血独特の鉄のような臭いが漂う。
『何だよ…これ…』
立ち上がると、明らかに低くなった視界。下に目を向けると縮んだ背丈。目の前には血だらけの女性…。
『マジで何なんだよ…リアルすぎる夢だな…』
軽く現実逃避してみる。頬を抓っても夢から覚めそうな気配はしない。
『もしかして、これ現実(リアル)?』
「そう、これは現実だ」
間抜けた声がして、バッと後ろを振り返る。そこには血を流しまくり、青い炎に包まれる男性がいた。
「まぁさかこんなトコにいたとはなぁ?探したぜ?」
『お前、誰だよ』
「そんなのお前が一番よく知ってんじゃねぇの?…オレは魔神(サタン)」
『はっ?そんなバカげた話があるわけねぇだろ?オレは悪魔なんかいない世界にいたんだ』
「だろーな。何せ、この俺がこっちに連れてきたんだからよォ?」
ギャハハハハっと気味の悪い笑い声が響く。何が何だかわからない。理解できない。理解したくもないが。
『……つまり、オレは異世界からやってきたと』
「モノ分かりが良いなぁ?そういうこった。お前の能力は役に立つ。まぁ、呼ぶのにてこずったがな」
『てこずった?』
「お前をそのまま連れてくるつもりが小さくなっちまったし、悪魔に産ませないと来れないときたんだもんなぁ」
『悪魔に産ませる…つまり、オレは悪魔っていう事か』
「正確には悪魔と人の子だ」
サタンが言うのはまるでとある漫画の世界の様な事…。馬鹿げてる。
「まぁ、お前にはオレと一緒に虚無界(ゲヘナ)に来てもらうとする」
いきなり男性の腕を折り、その血で虚無界の門を開きその中に入れられそうになる。…あながち馬鹿げてないかもしれない。
『い、嫌だっオレは人だ!悪魔なんかじゃないっ!!』
「あ゛ははあぁ!その姿を見てもそういいきるのか?」
ちょうど隣にあった鏡を見る。そこにはなぜかここの世界の主人公である物しか持たない“青い炎”を纏う自分の姿があった。
『青い、炎…なぜっ!?何でだ!!』
「お前にはオレの血も入ってるからな。オレの血が入った悪魔が生ませたんだからな」
動きが止まった。これ幸いとサタンは門の中に放り込む。
「さぁ、オレと一緒に虚無界ヘ行こうぜぇ!」
『あ"あ"あ"あ"あ"あ"ッ!!』
気持ち悪くなり叫ぶ。いや、これは人間が出せる声の領域を超えている。まるで、そう。
――咆哮――
「うお゛っ!」
その声の大きさにサタンが海を掴んでいた手が離れる。その隙に海はそこからはい出ようとする。
「無駄無駄!この門は一度飲みこんだものは決して放さない」
『クソッ、放しやがれ!!』
その時だった。突然右腕にいつの間にかついていたブレスレットが光った。正確に言うとブレスレットについている星型の金具がだ。
『な、何だ…!?』
その中の一つから一本の槍のようなものが出てきた。…三叉槍だ。三叉槍には青い炎が灯っている。
『(もしや……)これならっ!』
「や、やめろぉッ!!」
その槍でサタンを突く。サタンは奇声をあげて門に倒れ伏した。
それと同時に門も消滅し、その場には身元も分からない男女の死体と、返り血だらけの海が残った。
『はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…』
息も荒く、その場に膝ま付く。いつの間にか槍は消えていた。光も消えている。
「…一体何があったんだ?」
ビクッ
突然男性の声がした。また悪魔かと後ろを振り向く。そこにいたのは…
「おい、どうした!?」
見た事のある人物だった。
『あ"あ"…』
声が掠れてうまく話せない。彼……藤本獅郎はそんな海を抱きしめた。
「大丈夫だ…オレに全てを話してくれないか?」
『あ…あ゛あ゛あ゛…!!』
海はかすれた声のまま、全てを話した…