魔の預言者 本
□第四話
1ページ/6ページ
「…あり得ねぇよ…こんなひどい話があってたまるかよ…!」
燐はベットに座ってS.Qを読んでいた。…ベットサイドの棚には雪男から渡されたような教材達が眠っている。
「兄さん!なに呑気にマンガなんか読んでるの」
「あっ、テメ、返せよ!」
「勉強は!?僕、昨日教材渡したよね?少しは目を通したの?」
やはり勉強をしていなかったらしい。だが、手渡された教材をよく見ると…
「…通したけど、なんだよこの子供のためのって…!!人バカにすんのも大がいにしとけ!!」
「バカにはしてないよ…バカだとは思ってるけど。兄さんはそーゆーのの方が入りやすいかなと思って」
“子どものための聖書物語”
“悪魔妖怪図鑑”
“植物図鑑”
“日本の神様が良く分かる本”などなど、全て子供向けの本ばかり。
「大体、俺が机に座って勉強とか…そーゆーの向いてると思うか!?」
「全く思わないけど…祓魔師になるんでしょ。せっかくの休みなんだから、予習ぐらいはしておくべきだ」
「! どっかでかけんのか?」
説教をしながら壁に掛けてある祓魔師の服をとる雪男。その行動に敏感に反応する燐。
「依頼があったから出かけてくるよ。…ついでに買いだしも……そう遅くならないと思うけど…」
「依頼って…悪魔祓いに行くのか!?」
「うん」
「俺もつれてけ!文字なんかより直で見た方が何倍にも勉強になるだろ!」
「兄さんはまだ訓練生だよ。実戦訓練はまだ許可されてな…」
「今さら何だよ!こちとらすでに実践経てんだよ!許可もクソもねーだろ」
燐の気持ちを表すように、尻尾が左右にブンブン揺れる。
「………確かにね。しょうがないな……見学するだけなら。…ただし、僕のいう事は必ず聞いて。勝手な事はしない」
「そー来なくっちゃな!さすが俺の弟。話が早い!」
コンコンッ
『入っていーかー?』
ドアを開けて入ってきたのは海だった。手には昨日海にだけ渡された難しい教材が握られている。
「お、海!いいところに来たな!」
『いいところ?んだそりゃ』
「今から悪魔祓いに行くんだよ。実戦を生で見れるんだぜ!」
『…そうか。雪男、どこ行くんだ?』
「用品店“祓魔屋”だよ」
…昨日の夜ボティスが言っていた“動き”とはこのことか。一人納得する。
この様子じゃ教材の質問はできそうにない。あの事件は夜まで続くのだから。
『ん…オレも行っていいか?(心配だし)』
「僕は別にかまわないよ。逆に兄さんの監視役として呼ぼうかと思ってたところだ」
『ハハ…期待された働きが出来るかは保証できないけどな(逆の働きするぞ)』
その時、海の着ていた服についていたフードの中からゼルが出てきた。
《海、祓魔屋行くの?オレも行く!》
『言うと思った。アイツに会いたいんだろ?』
「アイツ?アイツって誰だ?」
「てか言葉を話した!?普通のケットシーは言葉を話さないはずだけど…」
『ゼルは特別。アイツってのはクロの事』
「そーいう事か…ま、遅れちゃうから早く行こう」
鍵束の中から“用品店の鍵”を取り出し、入り口の鍵穴に差し込む。ドアを開ければそこは寮の廊下ではなく外。
「うわっ、たけええええ!その鍵ってワ−プみてーだよな〜」
「…この学園はエクソシスト…聖十字騎士団にとって重要な拠点なんだ。だからフェレス卿の力によって中級以上の悪魔の侵入を防ぐ魔除けや、結界・迷路などに守られてる」
『鍵はそういう類に干渉されねーで場所を移動できる、いわば便利アイテムだ。無くさねーでとっとけよ』
「おう」
《じゃあ海、行ってくるねー!》
『夕方までには帰ってこいよ』
《分かったー!》
ゼルは巨大化して消えていった。いきなり大きくなった事に燐は驚き、その場で立ち止まった。
『…燐、行かねーのか?』
「い、行くっての!!/////」
顔を覗かれて距離が近づき、顔が赤くなったのを悟られない様に燐は早足で雪男について行った。
『…変な奴』
海がその変化に気付く訳もなく…