魔の預言者 本

□第十話
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あのままオレは思考を停止した。酔っていたゼルも酔いを覚まし、巨大化して寮へと送ってくれた…らしい。オレは何も覚えてない。
覚えているのは…“私”の時の嫌な夢を見ていたこと。夢の内容は走馬灯のように流れていく映像の断片だった。










“大切な存在”“家族以上の繋がり”“かけがえのない存在”

全てが分からない

何なんだ、この感情っ!

胸の中にじんわりと広がる暖かさ

知らない、しらない、シラナイッ!!

オレは、私は知らないっ!!

こんなの感じた事なんかない

前の世界でも家族なんてなかった

生まれて一日で施設の前に捨てられた私

それから施設で育った私に一生



“家族”“愛情”



そんなモノ理解できないと思ってた

そんな中私に心を与えてくれたのは金持ちのオジサン

施設にチョクチョク来ては私のことを可愛がってくれた

…でもあいつは裏切った





コイツ、顔はいいからなぁ。高値で売れるぞ!





私を屋敷に引き取ってから言われたのが、これだった

哀しかった 落胆した

そして何より



恨み 憎み 



世界に絶望した



そこから命からがら抜け出し、一人暮らしを始めた

そこでココロを失った

友達にも偽り、作りだしたココロで接した

もちろん、笑顔は表面上で

そこで襲ったのが今回の“トリップ”

そこで“私”を棄てて“オレ”になった  

ココロは戻ってこなかった

今も失ったままだ 

じゃあ、何だこの暖かいのは



…オレの中に心が戻りつつあるのか?



いやだ、いらねぇ、そんなモノいらねぇ!!



哀しむならいらねぇ



落胆するならいらねぇ



恨むならいらねぇ



憎むんならいらねぇ



絶望するならいらねぇ





オレに、ココロは必要ねェんだ!!











『……此処、は…』


「僕の部屋だよ」


「大丈夫か?」


「雪男、燐…」



ベットの横には雪男と燐が心配そうな顔で立っていた。外は暗い。かなりの時間寝ていたようだ。



「いきなり倒れるから、吃驚したよ」


『…すまねぇ』


「なぁ海。お前の闇の部分は俺らには見せてくれねーのか?」


『闇の部分…は、んだよ、それ』


「お前、倒れた後すっげぇ魘されてたんだよ。“いらねぇ”“ココロなんていらねぇ”…そう言ってたぞ」


『!』



驚いた。うなされている間、オレは口に出していたんだ、と。



『言えねぇ…まだ』


「いつ言ってくれる」


『時が来れば…全て』



いつもの海らしくない。弱弱しく、今にも消えてしまう。そんな感じだ。



「…待っててやるよ」


『は?』


「俺は、時が来るまで待っててやる。それまでに全部整理しとけ」



頭に手を置いて強く撫でられる。



『ああ…』



そう返すだけで精いっぱいだった。










ココロは戻りつつあるのかもしれない

でも、それを拒み続けたら、何もできなくなる

そんな気がした

いいのかもしれない



戻って来ても…




そう思い始めている自分が居るのも真実

オレはただ逃げていただけかもしれない



“感情”…から



傷つくのを怖がっていただけなのかもしれない

もうオレは十分成長した

傷ついても来た

それを“痛い”と感じなかったのは心がなかったから

なら、もう戻してもいいのかもしれない

あのジジィみたいに、裏切るものもいれば

燐達みたいに信頼できる奴もいる

なら、信じていいのかもしれない

まずは………





本当の、心からの笑顔を、出せるように……




















『さよなら、あの時の“私”』


「…うん、サヨウナラ、今までの“オレ”」


『「そして…」』



『こんにちは、オレ自身』





オレは、ココロを取り戻す。

感情を…痛みを…

速く、普通の人間(悪魔)へ…

なれますように、と

二人が去った後

窓の外に浮かぶ星に

初めて思った願い事

叶うだろうか?

オレ自身の、願い事






―――――

詩をかく気分で書いてたら、止まんなくなった!
この話以外にもこういうページ、つくろっかな…
僕、こういうの書くの好きなんだよねぇ…以外にも
 

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