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□標的40
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『あーあ、面倒だなぁ』
並中への道を、凪とともに歩くカレン。何時もなら闇龍で姿を隠していくのだが、今回は必要ない。必要が無くなった。
それに、今日の出来事を思うと、憂鬱になる。行きたくいない。でも、行かなければいけない。不登校になりそうな学生の心境だ。
「カレン、」
『何?凪』
「なんか、悲しそう」
凪に言われてハッとした。まさか表情に出ているとは思わなかった。
『何でもない。さ、行こうか』
「うん」
あの後、凪を家へと連れて帰り、明け方目を覚ました凪に幻覚のイロハを叩きこんだ。これは、骸からのお願いでもあった。
数日前に家へとやって来た骸が、クロームに力を付けて欲しいと頼んできたのだ。別に断る理由もなかったため引き受けた。
必死に覚えていく凪に、こちらも断然熱が入るというもので、全てを叩きこんだときには、既に夕方近くになっていた。
朝兼昼食兼夕食を腹いっぱい食べる前に、僕は凪の内臓の幻覚を強化した。そのためには、やはり物が必要だった。
そこで、嫌がる幻龍を無理やり呼び出し、鱗を一枚剥ぎ取らせてもらった。その時の絶叫がいまだに耳にこびりついている。
ちなみに、その鱗は凪の首にかけられている。
『着いた』
校庭には大掛かりなフィールドが用意されており、僕ら以外の守護者は全て揃っていた。
「それでは、雲のリング、ゴーラ・モスカVS雲雀恭弥 バトル開始!」
チェルベッロの掛け声とともに、始まる雲戦。だがしかし、勝負は意外にも…いや、予想通りあっけなく終了した。
『雲雀さん、さっすがー』
「雲の人、すごい…」
『雲雀さんね』
隣で三叉槍を強く握りしめながら言う凪。僕のことは名前で呼ぶくせして、他の人は皆、〜の人、だ。こだわりでもあるのだろうか。
「さぁ、おりておいでよ。そこの座ってる君。猿山のボス猿を咬み殺さないと、帰れないな」
その言葉を聞いたザンザスは、モスカを一瞬見た後、不敵な笑みを浮かべ、椅子から飛び上がった。
『凪、用意しておきな。油断は禁物だ』
「分かった」
始まった雲雀さんとザンザスの戦い。一度宙を仰ぐと、目を閉じる。
『(……ツナ達はまだあっち。モスカを止めるのは僕がやるか)』
再び目を開き、視線を前に戻すと、雲雀さんに向かって飛んでくる弾に向かって駆け出した。
キンッ ドガンッ
雲雀さんを掴み、素早く風龍の翼を出すと空中へと飛び上がる。その数秒後には、先程居た場所に弾が落ちてきた。
「子狐」
『すみません雲雀さん。ここから落としますが、着地できますか?』
「出来る」
『じゃあ、』
雲雀さんを掴んでいた手を離し、獄寺達のもとへと向かう。その場に降り立ち、一瞬で守龍の結界を張る。
ヴァリアー側には張ってないが、まぁ、自力でどうにかなるだろう。
「如月!何がいったい、どうなってやがるんだ!」
『モスカの暴走。早くこの場から離れて』
そうとだけ言い残すと、再び飛び上がる。
『凪!』
「分かってる」
声で呼びかければ、フィールド内にある重さを感知して爆発する爆弾と、自動砲弾が凍っていた。これで起動することはない。
『後は…(ピピピッ)なにっ!?』
凍っていない自動砲弾が、背中を向けている凪を狙っていた。この距離では結界は張れない。
凪のもとへ着いたとしても、空へと飛べ上がるための時間が、ない。
『(一か八か…)クソっ!凪ぃ!』
「え…」
やっと自動砲弾の標準が自分に合っていることに気付いた凪。急いで向かい、腕を掴むが、
ズガガガガッ
遅かった。
『クッ!』
咄嗟に凪を庇うように、抱きしめる。だが、痛みはいつまでたってもやってこない。
「大丈夫か、カレン」
凪から引き剥がされた自分の体。逆になぜか、自分が誰かに包み込まれている。この声って…まさか…
「ボス」
やっぱりィいい!
『離せツナ!』
「嫌だ」
『嫌だって、駄々っ子かお前は!皆の視線が痛いっての!さっさと手を離せぇええ!』
息継ぎなしでいいきった言葉。ツナは渋々といった様子で僕を離した。すぐさまその場を離れると、自動砲弾をぶっ壊した。
『(あー!なんなんだよ一体!僕は少女漫画的な展開を期待してないっての!何で、こう、変なタイミングで来て、変な行動するんだか!)』
機能しなくなった自動砲弾を見て、凪のもとへと戻る。
「カレンって、ボスとデキて『ないっ!』なんだ、つまらない」
なんか原作と全く違う娘なんだけど!?なんか、かなり饒舌なんですけど!?
「クローム、これは照れ隠しだ」
「なんだ。やっぱりデキてるのね」
『ちがぁああう!絶対、断じて、確実に、僕とツナはデキてないっ!ってか凪!キャラ変わりすぎだろお前!』
「それを言うなら、カレンも」
『煩い!』
ツナも乗るな!なんなんだよこれ!一応ここ戦場だよ!?戦ってるんだよ!?ヴァリアー居るんですけどォオ!?
「照れるなカレン」
『だから違うっての!て言うかしつこい!』