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□標的43
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『う……ぐッ……』
目が覚めると、カレンはとある部屋に居た。家具なんてものは必要最低限しか置かれていない。
『…どこ?』
辺りを見回してみても、部屋に居るということしか分からない。とりあえず外に出てみる。
『あー、体調が…』
胸元に下げてあるおしゃぶりを取り出す。いつの間にかカバーのようなものが付けてある。気のせいか、少し楽になった気がする。
『あ……』
「お、起きたか」
「よ、カレン」
明りが洩れていた部屋にたどり着くと、そこにはリボーンと山本、ラルが居た。
『このカバーってさ、ジャンニー二が作ったものでしょ』
「その通りだぜ。さすが時空の龍」
『…何それ』
「ああ、知らないのも当然だな。時空の龍ってのは、この時代のカレンのことさ」
『へー』
時空の龍…相変わらず龍に頼ってたんだ。この時代の僕も。
『そうだ、僕のとこのファミリーはどうなの?』
「それが、分からねぇんだ」
「カレンんとこのファミリーの拠点はイタリアだが、場所が特定できてねぇんだ。
場所を知っているのはお前んとこのファミリーと、この時代のお前とツナだ」
『何でそこに綱吉が入ってくるの』
「それはだな…いや、言わない方がいいか」
意味ありげに笑っているリボーンと山本。…なんかむかつく。
『母さんのことも分からない?』
「ああ、ボンゴレに関係のあるところは全て狩られていってるが、ドゥラドは……ま、大丈夫だろ。お前んとこのファミリーは強いからな」
リボーンのその言葉だけでも、少し救われた。
「そうだ、これを渡しておくぜ。この時代のお前から渡してくれって頼まれたものだ」
山本から手渡されたのは2つの腕輪。
『何これ』
「オレも詳しくはしらねーんだけどよ、何でも龍の力を引き出すのに使うとか」
とりあえず腕輪を両腕に付けておく。なんだか意外にもしっくりきた。
「それより本題に戻るぞ。ラル、お前はこれからどーするんだ?」
リボーンが真剣な顔つきになり尋ねる。
「白蘭を狩る。単独でな」
「無茶だぞ。外にはオレ達に有害な非7³線(ノン・トゥリニセッテ)が放射されてんだ。呪いで死ぬぞ」
「覚悟はできてる。どうせオレの命は長くない。なりそこないにしても非7³線を浴びすぎた………」
『まだ分からないよ』
カレンがそう言えば、意味が分からないと言った様子でラルが睨んできた。
「は?何がだ」
『僕の炎の特徴、知ってるでしょ?』
「破壊だろ。それがどうした」
『非7³線を破壊するんだよ。このカバーに炎を混ぜ込んで』
リングに炎を灯す。混じりけのない、澄んだ白い色だ。
「そりゃ無理だな」
そんなとき、山本が口を挟んできた。
『何故?』
「お前は自分自身のことをまだよく分かっちゃいない。炎のこともひっくるめてだ」
『なっ!?』
「自分自身を見つめ直さない限り、それはできない」
「だな」
ラルも口をそろえてそう言う。自分自身を見つめ直せって、いまいちよくわからない。
「とにかく、オレは白蘭を狩る」
「今はツナ達にお前の力が必要なんだ。考え直せねーのか?」
「お前と山本がいれば十分だぜ。断る」
「コロネロの敵を討つ気だな」
リボーンのその言葉に、ラルの動きが止まった。その時運がいいのか悪いのか、ドアが開いた。そこに居たのは綱吉と獄寺の2人。
2人を見たラルは行動を再開し、2人の言葉を無視してその場を立ち去っていった。
「おめー達、よく眠れたか?」
リボーンも、さも何もなかったかのように話し始める。
「いよいよ守護者を集めるミッションをスタートさせるぞ」
その言葉に慌てふためく綱吉。まぁ、無理もない。此処に来てまだ1日と立っていないのだから。
「最初に欲しい守護者は即戦力…つまりつえー奴だ。カレンは居るからいいとして、その次に思いつくのは誰だ?」
「強いって言ったら……ヒバリさん?」
「そうだ。ボンゴレ10代目最強の守護者の1人、雲雀恭弥だ」
「でも、ヒバリさん今どこに…?」
「それがよくわかんねーんだ」
「ヒバリの手がかりはこいつだけ」
山本に見せられた写真には、黒曜で戦ったバーズが持っていた鳥が映っていた。今は雲雀さんが飼っていて、ヒバードというらしい。
「まあ、でも、並盛好きのあいつのことだ。きっとこの町に手掛かりはあるはずだ。オレは行けねーがしっかり連れて帰って来い」
「お前…そんなに外だと体調ひどいのか…?」
「よけーな心配すんな。いずれこの話はしてやる。準備しろ。そーいやカレン。お前はどうする?行くのか?」
突然こちらに振られた話。どう答えようか迷う。
「そうだ、カレンも昨日体調がどーこー言ってたよな。何なんだ?一体」
『えーと、ついては行くよ。アレについてはこの時代の僕がいろいろと残してくれたみたいだから』
「何をだ?」
『このマント、実はアレを遮る仕掛けがあったらしいんだよね。昨日はそのおかげで倒れずに済んだから。
それに、僕はリボーンみたいに直接かかってないからさ。ある程度は大丈夫。カバーさえ壊れなきゃね』
「そうか。無茶はするなよ」
そう話しているうちにも、なぜかツナの視線が背中に突き刺さった。が、なんか触れたら負けのように感じたため、話しかけることはしなかった。
「山本が付いているから、この時代の戦い方は山本に聞け。奴はこの時代の戦い方を熟知している」
「なーに、ビビるこたぁないさ。お前達はこの時代のオレ達が失ったすんげー力を持ってんじゃねーか」
「失ったすんげー力?」
「……お前達は希望とともに来てくれたんだ。ボンゴレリングっていうな」