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□標的46
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そのころ、無事京子を救出し終えた綱吉は、並盛神社へと急いでいた。



「後1q弱と言ったところだな」


「煙……何かあったのか?」


「……やはりγは獄寺達のもとへ……」


「(無事でいてくれよ…3人とも…)」










〜並盛神社〜



綱吉がそう願っている時、



『僕の仲間から手ぇ離せ、金髪』


「お前も金髪だろ?時空の龍……いや、ドゥラドファミリー10代目」


『っ!』



血だらけの獄寺の首を持ち、持ち上げているγに銃を向けているのは、これまた血だらけのカレン。



「何故知っているって顔だな。金髪でオッドアイの奴なんて、そうそういないもんだぜ?」


『……』


「しっかし、何で死んだ人間がこうも生き返ってるんだ?お前も死んだはずなんだがな…ボンゴレの横で」


『っ!?』


「ボンゴレ10代目の射殺は、1度失敗してるんだ。お前のせいでな」



獄寺を放り投げ、カレンのもとへと一歩一歩近づくγ。



「一発目、お前が10代目の前に飛び出し、代わりに弾を受けた。そのあとのボンゴレといったら凄かったぞ?」



狐がカレンを包み、電撃を浴びせる。



『がっ!!』


「その眼に静かな怒りの炎を灯し、お前を抱きしめて………死んだ」


『それ以上………しゃべんじゃねぇ!!!』



首にかけていたおしゃぶりが光を発し、リングからはまたもや黒と白の炎が揺らめく。



『現に僕は、此処に居る!テメェらには殺されちゃいねぇ!!』


「…聞きわけのない娘だな」


『うるせぇ!!』



側にはいつ呼んだのか、天龍と地龍が居た。



「こりゃまた、凄いのが来たな」


《私達の主を泣かせたのは、あなたね》


《カレンを泣かせた罪は、重いぞ》



彼らに言われて気付いた。僕は…泣いていたんだ。



『天龍、地龍、力を』


《ええ》


《ああ》



天色と茶色の光の玉となった彼らが、カレンの付けた腕輪に灯り、光り輝く。光が収まると、手には2つの刀が握られていた。
刀に色はなく透明だったが、それぞれ天色と茶色の炎が灯っていた。動かすたびに、柄に付いた鈴がリン、と鳴る。



『(何だろう、この感じ……)』



まるで、闇に引き込まれていくようだ。体の芯から冷えていく。でも、どこか懐かしい感じがした。



「…何だい、こりゃ……」



目の前のγの目が驚愕で見開かれていく。それもそのはず。カレンの姿が、変わってきていたのだ。


髪は明るい金色から、まるで闇のような漆黒に

目は紫と青のオッドアイから、血のような紅に


目に生気はあらず、光が灯っていない。まるで操り人形のようだった。



『(不思議…自然と力が溢れてくる……でも、別の誰かに、体を支配された感じ…)』



闇に沈めば沈むほど、炎の威力は増し、次第に自分ではない誰かが現れていく。



『(まあいい、γ、お前だけは、許サナイ)』




何だろう、意識が飲み込まれてく……




本当のカレンは眠りに付いた。代わりに現れたのは、彼女の闇に巣食うカノジョ。



『ガンマ、オ前ハ……殺シテヤル。本当ノ俺ノ代ワリニ、殺シテヤル』


「おいおい、どーいうこった。ドゥラド10代目は魔法でも使えるのか?」



頬の涙を袖で拭うと、一瞬にしてγとの間合いを詰めた。先程とは全く違う、素早い動き。



「なにっ!?」


『死ネ』



γは振り下ろされた茶色い炎の灯る刀を紙一重で避ける。振り下ろされた地面には、深い亀裂が走った。



「……人間業じゃねーぞ。こりゃ」



まるで悪魔だ。



『ソウ、俺ハ悪魔サ』


「!?…もしやお前、人の心を読めるのか?」


『サァ、ドウダロウナ』



飛んできたビリヤードの玉を、今度は白い炎の灯る刀で真っ二つに斬った。



「(硬度の高い雷の炎をまとった玉が、斬られただと!?)」


『天ノ炎ノ前ニ、硬度ナドトイウ物ハ関係無イ』



ニタリ、と、気味悪い笑顔で笑うカレンであってカレンじゃない彼女。その笑顔にγは背筋が凍るのを感じた。



「(この顔は…人殺しに慣れた殺戮者の顔だ!)」


『ソノ通リサ。俺ハ今マデニ、コウシテ何人モノ人間ヲ殺シテ来タ。モウ一人ノ俺ノ代ワリニナ』


「ちぃっ!!」


『何ヲシテモ無駄ダ。俺ヲ傷付ケタコトノアル人間ハ、誰一人トシテ居ナイ』



ニタニタと笑いながら軽やかに刀を振り下ろすカレン。既にγには複数の深い傷ができていた。



『ソロソロ、クタバルコロダロウ?』


「(ありえない!こんなことが…こんな情報は聞いていない!)」


『ダロウナ。ナニセ、俺ハコノ身体ニシカイナイ。コノ時代ノ俺ニ、俺ハイナイ。イヤ、封ジラレテイタト言ウ方ガ正シイカ。
マァ、オ前ニハ、ナンラ関係ノ無イコトダ。知ッタトコロデ、オ前ハ死ヌノダカラナ。サヨウナラダ』



地面に這いつくばるγに止めを刺そうとした時、自分とは違う、温かい体温を感じた。



「コイツはキミの手を汚すほどの人間じゃない」


『誰ダ。俺ノ邪魔ヲスル奴ハ、殺シテヤル』


「忘れたのかい?僕は雲雀恭弥だよ、子狐。いや、カレン」


『ヒバリ…キョウ、ヤ………ダ、ト…?』


「そう、雲雀恭弥」


『ひバ、リ…さ』



だんだんとカレンの目に、再び光が戻ってくる。



「もう一人の君に呑まれちゃいけない。自我を…保つんだ」


『ヒば、さ………』



目に光が戻ると、糸が切れたように体の力が抜け、カレンは気絶した。その足元には、これまた気絶しているγの姿があった。
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