U
□標的48
1ページ/2ページ
ドガァンッ
綱吉の試練から数分後、漸くカレンが包まれていた球針態が盛大に音を立てて壊れた。
「漸く終わったのか…。成功したのだろうな」
「いや、違うぞ。失敗だ」
「何故そう思う、リボーン」
「殺気が、尋常じゃねぇ程の殺気が…漏れている」
それは、一流の殺し屋であるリボーンでさえ、思わず身震いしてしまうほどの殺気だった。隣に居る雲雀も、戦闘態勢に入っている。
『どうしたの?皆。武器なんかかまえて』
煙の中から姿を現したのは、いつも通りの
カレン。
『綱吉、君も終わったの?』
「……」
『無視?ひどいよ』
クスクスと、口に手を当てて笑うカレン。
「違う、お前は……カレンじゃないな」
『何処をどう見て言ってるの?綱吉。僕のどこが違う?』
「何処ってわけじゃない。雰囲気が、違う」
「さっさと正体を現しやがれ」
耐えかねたリボーンが銃を一発鳴らす。弾は確実にカレンの右肩を狙っていた。が、弾は彼女の体に当たる前に、何かに弾かれた。
『こうもカンタンにバレるとは……驚いたよ。流石、天下のボンゴレと言ったところ?』
「お前は、誰だ」
『さっきも言っただろ?僕は僕。ま、正確には…“僕”に潜む、もう一人の俺と言ったトコロカ』
いつの間にか、両手には透明の刀が握られており、髪の色と瞳の色が変わっていく。
『……人ガ、一杯ダァ…』
片言で話す彼女は、もはやカレンの面影を残していなかった。
「カレンを………返せっ!」
先程手に入れたばかりの新しい武器で攻撃を仕掛ける綱吉。しかし。それは簡単に受け止められた。
「なっ!」
『俺ヲナメナイデ欲シイナ。ソレニ、コノ身体ハ“僕”ノモノデモアルンダヨ?傷ヲ付ケレバ、当然“僕”モ受ケル』
「ちいっ!」
こう言われてしまっては本気で戦えない。綱吉は一旦飛び上がり、リボーン達のもとへ降り立つ。
「アイツは一体…」
「子狐の心に巣食う悪魔」
「え?」
「この時代の彼女が、自分でそう言っていた。もっとも、この時代の彼女はアイツの力をモノにしていたけれど」
トンファーを構えながら話す雲雀。
「あれは、子狐の心の闇が作りだしたもう一つの人格さ。本気で攻撃しないと倒せない」
「でも、」
「甘っちょろいことは言ってらんねーぞ。アレを倒さない限り、カレンは戻ってこれねーんだ」
《その通りだ、アルコバレーノ》
突如目の前に現れたのは、いつか見た白い龍。
「創龍、だっけか?」
《カレンは眠りについた》
「どういうことだ」
《試練に耐えきれなかったのだ》
「どうすれば、カレンを取り戻せる」
《……心の闇を、消し去るほかない》
「それは、一体どうやって…!」
《ボンゴレ、お前に力なくしてはカレンは戻れない》
創龍は綱吉に近づき、尻尾の炎をグローブにかざした。
《今回は特別だ。オレの力を貸してやろう》
「これは……」
綱吉のグローブに、橙色のほかに白と黒の炎が灯った。
《白は再生。黒は破壊。まぁ、カレンは白が破壊と勘違いしているがな》
「…」
《それがその炎の力だ。うまく使え》
そう言い残し、創龍は消えた。
「出来るのか、ツナ」
「やってみるしかないだろ。カレンを取り戻すんだ」
再びカレンに向き直る綱吉。カレンは待ちくたびれたかのように肩を落とした。
『アンマリ俺ヲ待タセナイデクレナイカ?』
「…今助けてやるからな、カレン」
『何ヲ言ッテイル。漸ク外ニ出レタンダ』
「そんなこと、オレには関係ない」
『ソウカ、オ前モオレヲ邪魔スルンダナ。ナラ………殺シテヤル』
本気の殺気が綱吉に浴びせられる。雲雀が思わず攻撃しようとすると、綱吉は片手でそれを制した。
「これは…オレがやります。ヒバリさんは手を出さないでください」
「…言うようになったね」
殺されるのを待っててあげるよ。そう呟くと、雲雀はトンファーをしまった。
「ありがとうございます」
『何話シテルノカ知ラナイガ…オ前ラノ命ハココデ終ワリダ。今度ハ前ノヨウニ邪魔サセナイ』
刀を構え、睨みを利かせるカレン。
『久シ振リノ殺シダ。楽シミダヨ。一杯悲鳴ヲ聞カセテクレヨ』
「これはもう、狂ってるな」
キャハハハハ、と笑うカレンを見て、リボーンは思わずそう呟いた。
「あれが……本当にカレンなのか?」
「信じるしかねぇだろ」
「しかし、アレは……!」
「ああ、間違いねぇ。7年前、オリテリッドファミリー残虐事件の犯人は、アイツだ」