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□標的49
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『……んッ…ここは?』
カレンが目覚めると、そこはトレーニングルームでもなく、自分の部屋でもなく、広い草原でもなく、ただ真っ白い世界だった。
『何処だよ、此処は…』
「よくぞやって来た、]世」
『貴方は…?』
「私は初代ドゥラドボス、ビブラード」
『プ、プリーモ!?いや、もう死んでるはずじゃ…』
「そう、私は死んでいる。今は創造神……今は創龍だったな。力を借りてここに存在している。と言っても夢だがな」
『夢か…』
「こっちだ、]世」
ビブラードに招かれ、白い世界をただひたすら歩く。
『…あの、どこに行くのですか?』
「もうすぐ着くぞ」
目の前が突然眩しいほどの光を発した。光が収まると、そこにはビブラードを含め9人の人がいた。
「俺はドゥラドU世、クレストだ」
「同じくドゥラドV世、マイズディ」
「ドゥラドW世、ボルティナ」
「ドゥラドX世、ジュライズナ」
「ドゥラドY世、ウボルド」
「ドゥラドZ世、ライデナル」
「ドゥラド[世、モルディーヌ」
「私のことは知ってるわよね。ドゥラド\世、アイラスよ」
「そして私が、ドゥラドT世、ビブラードだ」
目の前には歴代ボスが勢ぞろいしていた。その横には幻獣が居る。
「さあ、カレンちゃんも挨拶して」
『あ、はい。ドゥラド]世の月城カレンです』
「こんなちっこい小娘が]世だと?創造神も器を図り間違えたんじゃねぇのか」
『…言いたいとこ言ってくれますね、U世』
「粋がってんじゃねぇよ、]世」
「こらこら、ケンカしないで頂戴。本題に入れないでしょう?」
『…母さん』
「それじゃあ、本題に入るぞ。まず初めに、]世、お前は勘違いをしている」
『勘違い?何をですか』
「お前の炎だ」
『天地の炎ですか?破壊だけを進める炎でしょう』
「ちげぇんだよ、小娘。天地の炎は特別だ。一つで二つの属性を持ってる」
『一つで二つ?』
「そうだ。白は“再生”黒は“破壊”だ」
『え』
「今まで散々間違えやがって」
『じゃ、じゃあ、リング戦の時皆に流したのは破壊じゃなくて、再生?』
「そうよ。まぁ、どっちにしろ毒に蝕まれていく皆を再生していたのだから、あまり変わりはないわ」
『でも、黒い炎は今まで数回しか出てきませんでした。しかも出てくるようになったのは最近になってからです』
「それはお前の覚悟がたりないからだ]世。今回の暴走も、それが原因だ」
ビブラードは黒く染まった僕のことを指しているのか。
「アイツはお前の奥底に眠る、破壊の炎を持つお前だ。今はボンゴレ]世のおかげで眠ってはいるが、じき目覚める。
アイツを受け入れないことには、お前の覚悟はないとみなし、創造神はお前を殺しにやってくるだろう」
『っ!?創龍が、僕を殺しに…!?』
「それが創造神との契約だ」
突然、ボウッと言う音を立てて、カレンの横に黒い炎の塊が現れた。それは徐々に人の形になり、最後にはカレンと瓜二つとなった。
「…オ前ラ、俺ニ何ノ用ダ」
「他でもない、]世と一つになってもらうために呼んだ」
「フザケルナ!」
「ふざけてなどいない」
「俺ハ“僕”ノ闇ソノモノ!“僕”ノ闇ガ消エナケレバ、俺ハ消エナイ!消エラレナイ!」
「そんなことは分かっている。だが、お前が]世と一つになれば、闇が消えたも同然のこと」
アイラスに背中を押され、カレンは鎖で体の自由を奪われている“オレ”に近づいた。
「来ルナ!俺ハマダ、消エタク無イ!」
『別に消えなくてもいい』
その発言に、周りに居た歴代ボス達は驚いた。
「ナン、ダト…?」
『消えたくないんだろ?なら、消えなくてもいい』
「オ前、頭ガ可笑シクナッタカ!?俺ガ消エ無イトイウ事ハ、何時暴走シテモ可笑シク無イ状態ダトイウ事ダゾ!?」
『何、“俺”は消えたいの?』
「キエタクナイ!」
『ならいいじゃん。“俺”の意志は“僕”の意志、だってね』
そう笑えば、“俺”一瞬目を見開くと、大きなため息を吐いた。
「“僕”ハ、可笑シナ奴ダナ」
『僕が可笑しいのなら、“俺”も可笑しいんだよ』
「ハハ、ソウナノカモナ…イイダロウ、オ前ト一つニナッテヤル」
『いいのか?消えるぞ?』
「イヤ、俺ハ消エ無イ。“僕”ノ炎トナッテ、外ヲ見テイル。コレカラモ、ズット」
そう呟くと、“俺”はまたもや黒い炎となり、僕と重なった。不思議と温かい感じがして、なんだか懐かしかった。