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□標的51
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「………誰?」


「グロ・キシニアだ。その様子では状況を分かっていないな。さしずめ、不思議の国に迷い込んだアリスというところか。
しかし、10年前がこうもガキとは、熟したクロームの方が趣味だが…どれ」


「!!」



突然近くにやって来たグロは、クロームの右手を強く締め付ける。



「何かで固めてあるのか?こいつのせいでレーダーに反応がないのだな。だが間違いなさそうだ。リングリング、ボンゴレリーング」


「痛いっ!!」


「痛い〜か。男に触られて嬉しいようだな。頬の赤みが欲情を隠しきれてないぞ」


「………生まれつき」


「ヒッ」



何が気に入らなかったのか。右目の血管が浮き出るグロ。



「出てって…ここは私達の場所…ここには骸様と、犬と千種が帰ってくるの」



バックから三叉槍の槍の部分だけが見えたかと思うと、三叉槍全てが出てきた。どんな作りになっているんだ、あのバックは。



「一途な思いをぶり壊してトラウマを植え付けるのは、胸が躍るぞ」


「…?」


「その骸様は、私に敗れた。ちなみに、月城カレンという奴もな」


「うそ!」


「さあ、もっとその鈴の音のような声を、か奏でよ!!」



クロームの攻撃を軽々と避けると、自身の武器である鞭を振るった。










〜ボンゴレアジト〜



「骸に動きがあったってどういうことだ?まだ骸は復讐者の牢獄の中じゃ…」


「我々もそう思っています」



突然モニター室に呼ばれ、風呂上がりのまま向かった。



「5年前に、城島・柿本・クローム・カレンさんは復讐者の牢獄へ骸救出に向かい失敗。その後3人は消息を絶った…」


『僕も行ったのですか?…というか、3人って…』


「ああ、カレンさんは帰って来たんです。大怪我を負って」


『大怪我…』



どの時代でも怪我負ってばかりなんだな。



「話を戻しますね。そして半年ほど前、妙な噂が立った」


「妙な噂?」


「骸が倒された、というものです。発信元はミルフィオーレ。倒したのは第8部隊長グロ・キシニア。
数少ないAランクで、相当腕の立つ強物です。大きなダメージを負ったことも考えられますが、少なくとも死んではいないはずです」


『凪が倒れていないのでしょう?』


「察しがいいですね。そうなんです。我々はイタリアの空港である男と接触しているクローム髑髏を捉えたからです」



その写真には、腕を怪我しているものの生きている凪の姿があった。



「だが今、クロームは行方不明。ってことは今回動き出したのはこの密会していた男の方だな」


「流石です…その通り。雲雀はこの男が骸の何かだと踏んでいます。それと別に手がかりとして気にしているものがもう一つ。この写真に写っています」



そう言って出されたのは、いつの日か見たヒバードのが大きく写された写真だった。



『(凪………)』



その写真を見ると、カレンは両目を閉じた。










〜黒曜ヘルシーランド〜




今だクロームとグロの決着は付いておらず、今はクロームが火柱を出しているところだった。



「!」



しかしグロには効いていない。



「現術とは、脳にありもしないことを思い込ませ、でっちあげる技だったな。こんな子供騙しが通用するか。
私の誇る雨フクロウ(グーフォ・ディ・ピオッジャ)に手も足も出ずやられる様は、それは無様だった」


「うそ!骸様とカレンは負けない!」


「お前の知識は10年前で止まっているんだったな。よかろう、見せてやる。この時代の魔法を」



取り出した匣に炎を注入する。そこから出てきたのは、先程仕舞われたばかりの雨フクロウ。
そのフクロウの後ろには巨大な波。それは一瞬にして火柱を消し去った。



「これは現実だぞ。雨属性の匣の特徴は、鎮静。雨フクロウの大波は炎を消し、攻撃を鎮め、人体の活動を停止に近付け…意識を闇に沈める」



確かにクロームの瞼は閉じかけている。



「いよいよいただく時間だな。リングと………お前をな!!」



その瞬間、クロームは目を見開き三叉槍を杖に使って部屋を出ていった。



「そそるぞ」



気味悪く呟くと、グロもクロームの後を負った。










「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」



クロームは、10年前に犬と千種とともに作った隠れ場所に逃げ込んでいた。まるで体は動かず、今にも眠ってしまいそうだ。





眠ってはいけませんよ、可愛いクローム



起きて、凪





まさか、と思った。この場に居るはずのない、骸とカレンの声が聞こえたのだから。
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