泣けない鎮魂唱。
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――――・・ピピッ…ピピッ…
『「………」』
「…今日一日、絶対、安静にしていてくださいませね?」
『……はい…;』
…すがすがしい朝、とは言えない、どんよりとした空気。
みなさんいかがお過ごしですか?
俺…いえ、僕は…未だにベットの上です。
何故ベットの上にいるのかと言うと…
『……熱があるとは…思わなかった…』
「……自分のことに関しては本当に鈍感ですわね…」
そう、熱があるんです。
絶賛風邪ひきタイムです。
どうもありがとうございます。
…っておい。
…と、まぁこんな感じで。
ぽっぽと熱を発する体に反して、思考はいたって健康健全万歳…なんだが。
朝起きてみたら体全身に駆け巡る気だるさ。
頭もそれなりに痛かったし、喉だってひりひりして固形物を飲み込めそうにないような状態で。
といっても、風邪なのかも?なんてことは思いもせず、大して気にもならなかったから無理やり体起こして、身支度を整えたまでは良かった。
うん、そこまではね。
そっからが…ちょっと、ね…
「おはようございます龍牙様vV
本日も御目麗しく……」
『…おー…おはよう優飛……』
「……龍牙様…今すぐベットに戻ってください、今すぐ」
『……え〜…なんで…』
「文句言わない、今すぐ戻る、そして寝ろ」
「ぁ、はい」
毎朝部屋の前で待っていてくれる優飛とあいさつを交わした、次の瞬間。
何故か静かに怒られて、ベットに戻った俺。
そしてされるがままに寝巻にしているスウェットに着替えさせられ、ベットに押し込まれ、熱を測られ。
そこで初めて、自分が風邪をひいているということを知った。
「はぁ…何故熱を測るまで風邪だとお気づきにならなかったのです?
起きた時からおかしかったのでしょうに…」
『……ぅん…ちょっとだけね…』
どうやら風邪の原因は、昨日の出来事。
汗をかいたままの道着の上から冷水浴びて、頭冷やしたのがいけなかったらしい。
ちゃんと髪の毛はタオルで拭いたんだけど、道着なんてびっしょのまんまだったし…。
春先だとは言え、まだまだ夜は寒い。
濡れたまんまの道着を長時間身に着けていれば、風邪をひくなんてこと、小学生だって分かることだ。
風邪をひいた、熱がある、と自覚した途端、何故かどっと体が重くなった気がするし、頭がボーっとしてきた気がする。
…人間って単純。
「とりあえず薬を飲んで、今日一日は安静にしていてくださいね」
『……ふぁ〜い…』
ベットサイドにおいてあるミニテーブルの上に置かれたのは、ごく一般的な風邪薬と水。
どうやら俺がボーっと風邪をひいた経緯なんかを思い出している時に持ってきたようだ。
…なんて出来た奴だ。
「はい、どうぞ」
いったん起き上って、差し出された薬と水。
起きているのが辛くないように、腰のあたりにクッションを押しこんでくれた優飛に感謝。
…ちょっと結構ね…長座位の態勢さえもきつくなってきた…。
これも熱のせいかな、と思いながら手渡された薬に目を落とす、と。
透明な袋に真っ白な、粉。
『……粉薬は苦いから嫌だ…』
……できれば錠剤が良いです。
「わがまま言わない、すぐに飲む」
『…………』
この歳で粉薬苦いからダメ、とかお前…って思わないでほしい。
どうしてもダメなんだ、粉薬。
目線で訴えても聞く耳もっちゃくれないような態度の優飛に、ちょっとだけ不満をぶつけたくなった。
バシッと一回だけ肩を今の俺が出せる力の最大限で打ったたいたら、何故か眉根を下げられて笑われた。
…なんだよちくしょー。
ジロリ、と思いっきり睨んでおいて、男は度胸…男は度胸…、と念じながら薬の袋を開け、一気に口の中へ。
そしてすぐに水を口の中に流し込めば、口いっぱいに広がる薬独特の苦み。
…良薬口に苦し、とか言うけど…。
これで熱が下がらなかったら、絶対企業に文句言ってやる…、と心に誓ったのは俺だけの秘密。
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