泣けない鎮魂唱。

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ひやり、と冷たい感触。







『……ん………』


「あ、ごめん。
起しちゃったかな」







重く閉じられた瞼を少しずつ開いて行くとそこに見えたのは、赤銅色。



弱々しく目を見開けば、にこり、と笑われた。






『……何で、夏がここにいんの……』


「んー?
ないしょー♪」


『………あ、そ……』







…めんどくさい…。
非常に、めんどくさい。

正常な状態でさえあれば多少はリアクションがとれたかもしれないが、何せ今は風邪をひいている上に熱がある。
ボーっとした思考会をはショート寸前どころか、すでにショートしている。


……なんでいないんだよ優飛。







「っていうのは冗談で〜」


『……うん』


「ゆーたんね、お仕事で外出しなきゃいけないって言ってたよー?」


『…仕事……?』


「うん☆」


『ぁ…そぉ……』






…なんだ、仕事か…。






「けっこう不満げだったけどね〜」


『…なんとなく想像できる……;』







優飛の事だ。
きっと俺の傍から離れたくないだの言いながらぎゃんぎゃん喚いてたんだと思う。

それにアイツ、何故か夏の事が苦手みたいだし…。
…ん?
じゃあなんで夏がいるんだよ…。
苦手な奴にわざわざ看病的なもの頼むなんてこと、俺だったらしないと思うんだけど。


…ますます分からなくなってきた。





まぁそんなことよりも、だ。








『(できれば今は夏と一緒にいたくないな…)』







数日前にあったこと、少しだけまだ引きずってる。

少なくとも俺が荒れたのは夏目の一言に原因があるわけで…。
全部が全部夏目のせいではないのだけれど。

だからちょっと顔を合わせてしまうと、その時の事が思いだされてしまうのだ。








「……ごめんね、りゅーたん」


『…何…急に……』






なんとなく、と続く言葉。

気だるげに顔を向ければ目があって、眉を八の字にして苦しそうに笑っている。
謝れられるようなことをされたことが無い…と思ってる。

なのにこいつは辛そうに、正直今の俺よりも辛そうに笑ってる。


なんで…

どうして…


そんなことがぐるぐる、ぐるぐると頭の中を行ったり来たり。







余計に気持ち悪くなっていく体調。

胃が絞めつけられるように痛い。







「    …、龍牙…」











やめろ…




もうやめてくれ…ッ!!!








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