短編

□大晦日の誘惑
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ヒロさんはほんのり色づいた頬にワインの瓶を押し当てて、年末恒例のお笑い番組を見ながら大笑いしている。

ケラケラ笑うヒロさんはいつもより幼くて可愛い。

「のわき〜、あれ見ろ」

うん、可愛い。
何度でも言うが可愛い。

「ヒロさん酔ってます?」

「酔ってなんかないもん」



………もん、とか可愛すぎる。



どうやら完全に出来上がってるらしい。

「ヒロさん、飲みすぎです」

ヒロさんが持っているワインのボトルを取り上げようとした。

「う〜、のわきのばかっ!まだ飲めるのに〜」

すぐさま、どこからそんな力が湧いてくるのか、もの凄い力でヒロさんにワインを取り返された。

「まだ飲む」

「……ちょっとだけですよ」

「ん」

結局俺はヒロさんに甘い。

また上機嫌にワインを飲みつつテレビを見始めたヒロさんに、俺は目を細めた。

健康を気遣って止めたけど、酔っ払ったヒロさんは嫌いじゃない。むしろ好きだ。

ピンクに染まった目元、とろりと落ちた瞼、影ができるほど長い睫、どれを取ってもいつにも増して色っぽい。

普段見られないヒロさんを堪能できてとても嬉しいのだか、一つ困ったことがある。

お酒の混じったヒロさんの匂いと色っぽい姿は、俺の下半身をダイレクトに刺激する。

無邪気に笑うヒロさんの横で、俺は悶々と邪な欲望と闘っていた。

「のわきー、おかわりー」

「はいはい」








「のわき、なーに見てんだ?」

「え?」

ちらちらと愛らしい恋人を見ながら酒を飲んでいると、ふとヒロさんと目が合った。

「やらしい目で見てるだろ」

ふふん、となぜか得意そうに言うヒロさんに面食らった。

やらしい目で見てるのは事実で、言い返せない。

俺が、おろおろとしていると、ヒロさんはにやっと笑って、乗り上げてきた。

―――俺の膝に。

「ちょ、ヒロさん!」

「あんだよ」

呂律が回ってない。

「ヒロさん、」

「やだ」

「……………」



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