短編

□M大のとある日常
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「…………で?宮城教授に入れてもらったと?」

「はい………。ヒロさん、怒ってます?」


野分の話をまとめるとこうだ。

今日、野分は珍しく休みだった。平日だからもちろん弘樹は仕事。
お昼を一緒に食べたいが弘樹は仕事だから無理。
それならばせめて、と手作り弁当を届けに来た。
メールをして外で待っていたのだが、ちょうど宮城教授が通りかかり、事情を聞いた教授が研究室に案内してくれた。


ということらしい。





「別に怒ってねえよ。弁当サンキュ」

正直言うと、弘樹はとても嬉しかった。


最近忙しくて会えてないのに加えて、野分がやっと取れた休日は平日。

なるべく早く帰ろう、と心に決めていたのだ。


それが、こうして昼にも野分の顔を見ることができて、嬉しくないはずがない。


ぶっきらぼうな言い方になってしまったのは照れ隠しだ。

顔が赤くなっていそうで弘樹はふいっと顔を背けた。


「よかった。急に職場に押しかけて迷惑かなと心配だったので」

「……午後からはしばらくヒマだから、平気だ」

ぼそっと言うと、野分は嬉しそうに破顔した。

「ヒロさん♪」

「………なんだ」

「大学では眼鏡なんですね。かわいいです」

「かわいいって……」

「はい、かわいいです」

「……………」


ふいに弘樹は野分をじっと見つめた。


「??」


野分は不思議そうにしながらも、目を逸らさず笑顔のままだ。

犬のようにパタパタと尻尾を振られているのが見えて、弘樹は少し笑った。


「俺の顔見て笑わないで下さいよ」


唐突に弘樹が笑ったために、勘違いしたのか野分は少し拗ねたように言った。


「ごめんごめん」

「……別にいいですけど」

ヒロさんが笑ってくれるならおもしろい顔でもいいかなと野分は半ば本気で思った。







草間野分、末期である。







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