短編

□花言葉
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「ヒロさん、プレゼントです」

そう言って野分が渡してきたのは、小さな花束。

「なんだ、いきなり」
突然やってきた野分の突然のプレゼントに少し驚く。

「花屋で売れ残ったのをもらってきたんです」
「へえ、きれいだな。なんて花だ?」

花といえばバラとユリぐらいしか知らない俺は、赤色の花の名前を野分にきいた。

「アネモネです」
「ふうん」

男に花って……と少し思ったのだが、俺が素直に受け取って嬉しそうにしている野分を見れば、こっちも嬉しい。
何より、野分がくれたということが嬉しかった。

「赤いアネモネの花言葉知ってますか?」

野分は花屋のバイトが長いせいか花言葉も詳しい。

「知らない。何なんだ?」

「“君を愛す”です」

満面の笑みとともに告げられた言葉と愛おしげなその瞳に。

嬉しい、と顔に出たのがバレそうで、俺はにふんっと顔を背けた。

ふいに、ぎゅっと背後から抱きしめられた。

「ヒロさん、大好きです」

それでもやっぱり、お前には全部バレている。






end
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