短編
□ただいま
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一週間ぶりに家に帰ってきた。
ヒロさん不足もそろそろピーク。
「ただいまです」
でも、ヒロさんからの返事がない。
くつはあったし出かけているわけではないだろう。
「ただいまです」
もう一度言って、リビングに入った。
(ヒロさん……)
愛しの恋人は、本を胸に伏せた状態で、ソファーで眠っていた。
久しぶりのその姿に胸が暖かくなる。
「ヒロさん、風邪ひきますよ」
「ん……」
そっと声をかけてみたが起きる気配はない。
「ヒロさん」
髪に触れる。
仕事が大変なのだろうか、少しやつれているが、一週間ぶりに見るヒロさんは相変わらず綺麗だ。
こうやって顔を見ただけで仕事の疲れが吹き飛ぶのが分かる。
この人が家にいてくれるだけで、がんばれる。
でも、寝顔もかわいいけど、やっぱり目をみて話がしたい。
「……ん…のわき?」
そんな俺の願いが通じたのか、ヒロさんが長い睫を震わせて目を開けた。
「はい、ただいまです」
「ん、おかえり」
今日三度目の“ただいま”には、大好きな人の“おかえり”と優しい笑顔が返ってきた。
end