短編
□興味
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「はあー」
「どうした野分。でっけー溜め息なんかついて」
聞かなくても、こいつの悩みなんてあの美人だけど凶暴な恋人のことだろうけど。
「いや、ヒロさんが今日飲み会らしくて…」
やっぱり『ヒロさん』絡みか。
野分が握りしめたケータイを覗き込むと、
『教授とゼミのメンバーと飲んでくる。仕事がんばれ』
の文字。
「なんだヒロさん酒癖悪いのか?」
「先輩、ヒロさんって呼ばないで下さい。……酒癖悪いっていうか…」
ようするに野分の話をまとめるとこうだ。
かわいい恋人は酔っ払うと更にかわいくなって、しかも無防備で隙だらけになってしまう。それが心配だ。
「……それで、お前どうすんの」
心配というかほぼノロケだなと辟易しながら言った。
「………どうしましょう」
野分はケータイを見つめて、ヒロさんヒロさんと呪文のように呟き始めた。
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