短編
□rely on me
1ページ/3ページ
「うわっびっくりしたっ……いるなら電気くらい付けろ」
帰ってくると、珍しく野分がいた。真っ暗な部屋の中、ソファーに座り込んでいた。
「あ……ヒロさん、お帰りなさい」
野分はそう言ったきり、ソファーに沈み込んだ。
弘樹は眉をひそめた。
……おかしい。
いつもならうっとおしいくらい構ってくるのに。
「おい、野分。何かあったのか?」
弘樹は荷物を適当に放り出し、野分の横にどかっと座った。
「いえ、何でもないんです……」
「うそつけ。何でもある顔してるぞ」
仕事の疲れにしても、野分は明らかに顔色が悪かった。
「ヒロさん……」
急に、強く抱きしめられる。
いつもなら離せと大騒ぎするところだが、今日はそうしない方がいい気がして、弘樹はされるがままになっていた。
「あんまり無理するなよ。お前ちょっと鈍いんだからさ」
ぽんっと頭を撫でてやる。
「………はい」
野分はそれだけ言って、さらにきつく弘樹を抱きしめた。
(だめだ。今日のはかなり重傷だ)
「言いたくないならいいけど、俺でよかったら聞くぞ」
弘樹も野分の背中に腕を回した。野分は少し震えていた。
「あの………」
「うん?」
.