中編

□見返り美人
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「何で俺がそんなこと……っ」

「しょうがないって。職員全員一致だったし」

弘樹は宮城教授に慰められるように、ぽんっと肩を叩かれた。







M大学祭には、毎年の恒例行事で、“ミスター・ミスコンテスト”というものが存在する。男子が女装して美しさを競うという男版ミスコンだが、それを盛り上げるために、特別に教師陣の中から1人参加することとなっている。



今年は、弘樹に白羽の矢が立ったのだ。


一番若いし、押し付けられて当然といえば当然なのだが……。



「はぁ、……俺が女装してもキツいだけですって」

「いや、上條は似合うだろうよ。……去年は松山教授で、それはもうひどかったぞ……盛り上がるという点では最高だったが」

恰幅のいい、50過ぎの松山教授が女装している所を思い浮かべ、げんなりする。

自分の方が若いとはいえ、やはり同じように目も当てられない状態になるだろう。

「………ハァ」

大きなため息をつく。おそらく学祭の1日で“鬼の上條”の威厳も何もかも全部台無しになるに違いない。

宮城教授は慰めるように、コーヒーを差し出してくれた。




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