memo
□夜の町で
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※ホスト×ホスト
「ヒロさん、お疲れ様です」
仕立てのよいスーツを着た先輩に声をかけると、「お疲れ」と、笑みを向けてくれる。
色素の薄い髪を揺らして、同色の瞳を細めて笑う。
夜の街が似合わない人だなあ、と思う。
この職業をやっていく上で、容姿は申し分ない。口が上手いとは言い難いが、何においても博識で、会話が途切れることはなく、客を退屈させない。指名率の高い売れっ子。
でも、この人の居場所はここじゃない。酒の匂いが充満する夜に、ヒロさんは似合わない。
“何でホストしてるんですか?”
いつだったか、そう聞いたことがある。
その時は“金が無いから”と、明瞭簡潔な答えが返ってきた。
微妙な顔をしていると「お前もだろ」と笑っていたような気がする。
目の前にある大好きな笑顔。その顔色がいつもより悪くて、俺は眉を寄せた。
「ヒロさん、体調悪いんですか?」
ヒロさんは驚いたような顔をした。
「ちょっと風邪気味かな?それに今日は飲みすぎた」
そう言って、ヒロさんはお前には隠し事できないな、と小さく笑った。
「薬持って来ます」
無理やりヒロさんをソファーに寝かせ控え室を出た。
パタンと閉じた扉を背に、溜め息をつく。
ヒロさんが好きだ
隠し通そうとしているその想いをぶつけてしまいたくなる。
それは純粋な想いではない。
体調が悪いというヒロさんを、押し倒したいと思ってしまった。
そんな醜い欲望を伴った感情で、美しいあの人を汚したくない。
尊敬が、いつしか恋情に変わっていた。
いつから好きだったかなんて覚えてもいない。
気がつけば俺の一番はいつだってヒロさんで、欲しいと焦がれるのもヒロさんだけだった。
そばにいれたらそれでいいと本気で思っているのに、その心も体も欲しいと願うのは我が儘なのだろうか。
「大丈夫ですか?」
薬と水を片手に戻ると、ヒロさんは寝ていた。
「ヒロさん」
顔をそっと覗き込んだ。
疲れているのだろうか、目の下に出来ている隈が痛々しい。
苦しかったのか、ジャケットを脱いでシャツのボタンをいくつか外している。
白くてきめ細かい肌が晒された首筋や胸元に視線が吸い寄せられた。
いけないとは思いつつも、目が離せない。
「ヒロさん…」
顔にかかった柔らかい髪を払った。
一度だけ。
そう言い訳して、そっと唇を重ねた。
キスとも言えないような、幼い口づけをしてすぐに離れた。
「……寝てる時にするな馬鹿」
野分が出て行った後、弘樹は真っ赤になって呟いた。
おわれ
ボツ理由…
文章がまとまらなかった。
ホスト感0だった。
続けたかったが挫折した。