memo
□告白は恋のはじまり
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※中学生×高校生
幼なじみ
「……おい、何するつもりだ?」
「それを言わせたいんですか?」
表情一つ変えずにぬけぬけとそんなことを言い、熱の籠もった瞳で見下ろしてくる目の前の男――幼なじみの野分であるが――を睨みつけた。
簡単に言うと、俺は今マウントポジションをとられている。
これで「ヒロさんプロレスごっこしましょう」とか言われたら「バカ」とか何とか言って笑えたはずだ。
「ヒロさん、好きです」
突然の告白と共に抱きしめられ、今の状況にあるとなっては押し倒されているという他にない。
冗談だろ、と笑い飛ばせるものならそうしたいがそんなことはできなかった。
長い付き合いだからこそ分かる。
あぁ本気なんだ、と。
射抜くように見つめられて、その瞳の意味を否定することはできない。
「…………俺男なんだけど」
「知ってますよ」
何を今さら、とでも言いたげな目で見られてうろたえた。
「まあ…とりあえず退け」
抑えつけられた手はビクともしなくて、顔をしかめた。
上から抑えつけられているとはいえ、最近ぐんぐん伸びているらしいこいつの身長が俺と同じぐらいになったとはいえ、4つも下の中2男子相手に力で勝てないとは情けない。
「なあ、野分退けって」
「いやだ」
駄々っ子のような言い方に思わず苦笑した。
たいていは素直で聞き分けがいいのに、妙な所で頑固なとこは昔から変わらない。
「……何で笑ってるんですか」
「いや、お前は変わらないなあって」
状況も忘れて笑みを漏らすと、俺を抑える野分の手に力が入った。
「野分、痛い」
「………何でですか」
ぽつりとそう呟いた野分は、くしゃりと顔を歪めた。
泣きそうなその表情に目を見開いた。
昔はよく泣いていたけど、こんな表情を見るのは久しぶりな気がする。
「俺変わりましたよね?」
「野分」
「……俺はいつだってヒロさんの背中を追いかけていて、」
「……のわき」
「あなたに並びたくて、勉強も運動も頑張って」
「………」
「でもいつだってヒロさんは俺を弟みたいにしか思ってないから」
「………野分」
「こんなことして、嫌われるってことぐらい分かってます。それでも俺を意識して欲しかったんです」
いつの間にか拘束は解かれていて、野分は俯いていた。
体を起こして、いつの間にか目線が同じになった幼なじみを見つめた。何かあったら、俯いて俺に顔を見せないのも昔からの癖。
「野分」
そっと肩に触れると、ビクンとその体が揺れる。
「……俺思い出したんだけど」
「…………」
何も言わない野分を気にせず、言葉を続ける。
黙り込むのも、昔から。
「お前が妙に頑固なのも、泣き虫だったのも、全部俺が原因だったなあって」
俺と一緒に遊びたいと駄々をこねて、俺と小学校が違うと泣いて。
どこか大人びたこいつが、強い感情を見せるのはいつも俺のことだった。
野分は顔を上げた。
涙は流していなかった。
「……俺のこと、いつから?」
「分かりません。物心ついた時からずっと好きで」
今さら赤くなりながら喋る野分をかわいいなあ、と思う。
「いきなり、お前を恋人にはできないけど、」
「分かってます」
「その、……お前の告白は嫌じゃなかったから、考えてやってもいい」
「どういう…」
「俺が高校卒業するまでに、本気にさせたら付き合ってやる」
「ヒロさん……!!」
単なる気まぐれだったかもしれない。でも、こいつとの未来も悪くなさそうって思ったから。
「俺、全力で…本気でアタックします!!」
野分のその宣言の通り、猛烈なアピールを受け、俺がついに白旗を上げるのは、そう遠くなかった。
おわる
ボツ理由…
長編にするつもりが告白シーン書いて満足した